1歳で言葉が出ないのは大丈夫?

ことばの遅れ
ふくろう
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こんにちは
臨床心理士・公認心理師のふくろうです。

1歳の誕生日を迎えても、まだ言葉が聞こえない

1歳のお誕生日。周りの子が「ママ」「パパ」「ワンワン」と言葉を口にし始めているのに、うちの子からはまだ喃語しか聞こえてこない。「1歳で言葉が出ないのは大丈夫?」そんな不安が頭をよぎることもあるかもしれません。

育児書には「1歳前後で初語が出る」と書いてある。健診で聞かれたときに「まだです」と答えるのが少し気まずい。SNSで同じ月齢の子が話している動画を見て、焦りを感じてしまう。そんな経験をされている方もいるのではないでしょうか。

1歳という節目は、親にとっても一つの目安になる時期です。けれど、言葉の発達には本当に個人差があって、1歳で言葉が出ていなくても心配しすぎる必要がない場合も多いのです。

ここでは、臨床心理士としての視点から、1歳で言葉が出ないことについて、少し丁寧に見ていきたいと思います。

1歳の言葉の発達には、大きな幅がある

まず知っておいていただきたいのは、1歳での言葉の発達には本当に大きな幅があるということです。

1歳前後で意味のある言葉を話し始める子もいれば、1歳半や2歳近くになってから話し始める子もいます。どちらも、発達の正常な範囲に入ることが多いのです。

1歳という年齢は、まだ言葉の発達が始まったばかりの時期です。この時期に大切なのは、言葉が何語出ているかよりも、コミュニケーションの土台が育っているかどうかです。

たとえば、親が話しかけると嬉しそうに笑う、名前を呼ばれると振り向く、「バイバイ」と手を振ると真似をする。こうしたやりとりがあれば、言葉へとつながる力は確実に育っています。

また、指さしをして何かを伝えようとする、欲しいものを視線で示す、「ちょうだい」と言われると物を渡す。こうした行動も、コミュニケーションの大切な形です。

言葉という形になっていなくても、こうした土台がしっかりしていれば、言葉が出てくるのは時間の問題かもしれません。

1歳で言葉が出ない理由はさまざま

1歳で言葉が出ない背景には、いくつかの理由が考えられます。

一つは、単純に言葉を話すための準備に時間がかかっているということです。口や舌を動かす筋肉の発達、音を聞き分ける力、言葉と意味を結びつける理解。こうした力が揃うタイミングには個人差があります。

また、気質として慎重なタイプの子どももいます。十分に理解してから行動に移したい、確実にできるようになってから表に出したい。そんな性格の子どもは、言葉についても同じように、じっくりと準備をしてから話し始めることがあります。

環境も影響することがあります。親が先回りして子どもの欲求をすべて満たしてしまうと、子どもが言葉で伝える必要性を感じにくくなることもあります。逆に、周囲がたくさん話しかけすぎて、情報を整理するのに時間がかかっている場合もあるかもしれません。

兄弟がいる場合には、上の子が代弁してくれることで、自分から言葉を発する機会が少なくなることもあります。

どの理由も、「だから問題がある」ということではなく、子どもが今どんな状態にあるのかを理解するための手がかりです。

1歳で大丈夫かどうかを見分けるポイント

では、1歳で言葉が出ないとき、どんな様子があれば「大丈夫そう」と感じられるでしょうか。

まず、音への反応があるかどうかです。名前を呼んだら振り向く、好きな音楽が流れると体を揺らす、ドアの音や外の音に反応する。こうした様子があれば、音を通じた情報をしっかりと受け取っています。

次に、コミュニケーションの意欲があるかどうかです。親の顔を見て笑う、「いないいないばあ」を楽しむ、何かを指さして親の反応を見る。こうしたやりとりがあれば、人と関わる喜びが育っています。

理解する力も大切な目安です。「ちょうだい」と言うと渡してくれる、「バイバイ」と言うと手を振る、「ダメ」と言うと動きを止める。言葉を話さなくても、意味は理解しているということです。

そして、感情表現が豊かであることも良いサインです。嬉しいときに笑い、悲しいときに泣き、怒ったときに表情や態度で示す。感情がしっかりと育っていれば、それを言葉で表現する日もそう遠くないかもしれません。

こうした様子が見られるのであれば、1歳で言葉が出ていなくても、発達そのものは順調に進んでいると考えられることが多いのです。

少し気にかけておきたいサイン

一方で、少し注意深く見ておいたほうがよい場合もあります。

名前を呼んでも反応が乏しい、音がしても振り向かないことが多い。こうした様子がある場合には、聞こえ方を確認してみる必要があるかもしれません。

また、人との関わりそのものが少ない場合も気にかけたいポイントです。親が遊びに誘っても関心を示さない、笑いかけても反応が薄い、一人で同じ行動を繰り返すことが多い。こうした様子があるときには、関わり方を工夫してみることが助けになるかもしれません。

周囲の言葉への理解も乏しく、簡単な指示が通らない、日常の流れについていけないように見える。そんなときには、理解する力全体がゆっくりと育っている可能性もあります。

ただ、これらのサインが一つや二つあるからといって、すぐに何か問題があるというわけではありません。気になることがいくつか重なっていたり、日常生活の中で何度も繰り返し見られたりする場合に、専門家に相談してみることを考える目安になるということです。

1歳の今、できる関わり方

1歳で言葉が出ていなくても、今からできる関わり方はたくさんあります。

一つは、たくさん話しかけることです。ただし、教え込もうとするのではなく、日常の中で自然に言葉に触れる機会を作る。「おいしいね」「きれいだね」「犬さんいたね」。そんなふうに、目の前のことを穏やかに言葉にしていく。

絵本の時間も大切です。1歳の子どもには、シンプルで繰り返しのある絵本が向いています。ページをめくる楽しさや、絵を一緒に見る時間そのものが、言葉を育む土壌になります。

遊びの中で音を楽しむことも効果的です。手遊び歌や音の出るおもちゃ、リズムに合わせて体を動かす。そうした活動が、音への関心を高め、やがて言葉につながっていきます。

そして何より、子どもが何かを伝えようとしたときに、しっかりと受け止めることです。指さしをしたら「あれが見たいのね」と応える、泣いたら「どうしたの?」と声をかける。そんなやりとりの積み重ねが、言葉を使う動機を育てます。

焦らず、でも丁寧に。そんな姿勢で関わっていくことが、1歳の子どもの言葉を育てる一番の方法なのかもしれません。

1歳半健診までに様子を見てもいい

多くの自治体では、1歳半で発達の健診があります。言葉の発達についても、その時期に改めて確認されることが多いでしょう。

1歳の時点で言葉が出ていなくても、1歳半までの半年間で大きく変化することもよくあります。この時期の子どもの成長は本当に早く、昨日できなかったことが今日できるようになることも珍しくありません。

ですから、1歳で言葉が出ていないからといって、すぐに焦る必要はありません。日常の関わりを大切にしながら、1歳半の健診まで様子を見るという選択もあります。

ただし、様子を見るというのは放置することではありません。子どもの変化を丁寧に観察しながら、関わり方を工夫し続けること。そして、もし気になることが増えたり、不安が大きくなったりしたら、健診を待たずに相談してもよいのです。

相談することは、決して大げさなことではありません。むしろ、早めに専門家の目を借りることで、安心材料が見つかったり、具体的な関わり方のヒントが得られたりすることもあります。

1歳の今は、土台を育てる時期

1歳という時期は、言葉そのものよりも、言葉へとつながる土台を育てる時期です。

人と関わる喜び、伝えたいという気持ち、音への興味、世界への好奇心。こうした心の動きが、やがて言葉という形をとっていきます。

今は言葉が出ていなくても、子どもの中では確実に何かが育っています。音を聞いて、人の表情を見て、世界を感じ取って。そうした経験のすべてが、言葉を育む栄養になっているのです。

焦らず、でも見守りながら、子どものペースを信じて待つこと。それが、1歳の今できる一番大切なことかもしれません。

あなたが今感じている不安も、子どものことを大切に思うからこそ生まれているものです。その気持ちを大事にしながら、でも一人で抱え込みすぎず、できる範囲で今を過ごしていってください。

1歳で言葉が出なくても、それは子どもの物語の始まりに過ぎません。これから先、どんなふうに言葉が育っていくのか。その過程を、少しだけゆったりとした気持ちで見守れたらと思います。

ふくろう
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ここまで読んでくれてありがとう。


※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うものではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

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