
こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。
はじめに
朝の忙しい時間に癇癪が重なると、親子ともに余裕を失ってしまいます。
この記事では、朝の支度で癇癪が起きやすい理由と、気持ちの切り替えを助ける関わり方を解説します。
毎朝繰り返される、同じ光景
朝の支度で癇癪になる理由が分からず、途方に暮れている親もいるのではないでしょうか。起きてほしい時間に起きてくれない。着替えを促すと泣き出す。朝ごはんを食べようとしない。靴下を履くだけで大泣きする。そんな光景が毎朝のように繰り返され、時計を見るたびに焦りが募っていく。
「早くしなさい」と声を荒げてしまう。子どもはますます泣き叫ぶ。結局予定の時間に家を出られず、保育園や幼稚園に遅刻してしまう。そして自分自身も仕事に遅れそうになる。その繰り返しに、親の心は疲弊していくことがあります。
「どうしてこんなに簡単なことができないのだろう」「他の子どもはちゃんとできているのに」そんな思いが頭をよぎり、自分の関わり方が間違っているのではないかと不安になることもあるでしょう。けれども、朝の支度で癇癪になることには、ちゃんと理由がある場合が多いのです。
朝という時間帯が持つ難しさ
朝の支度で癇癪になる理由を理解するために、まず朝という時間帯そのものの特徴を考えてみる必要があります。
一般的に、朝は子どもにとって一日の中で最も脳と体が目覚めきっていない時間であるとされています。大人でも寝起きは頭が働かず、動きが鈍くなりますが、子どもはその状態がより顕著である場合が多いのです。眠りから覚めて、意識がはっきりするまでには時間がかかります。その曖昧な状態のまま、次々とやるべきことを求められるのですから、子どもの心は混乱してしまうことがあります。
さらに、朝は時間に追われる時間帯でもあります。何時までに家を出なければならない、という制限がある中で、子どもは急かされ続けます。けれども、子どもには大人のような時間感覚がまだ育っていない段階にあります。「早く」と言われても、それがどれくらいの速さなのか、なぜ急がなければならないのか、理屈では理解できても体がついていかない場合があるのです。
また、朝は一日の始まりであるがゆえに、これから起こることへの不安も抱えている可能性があります。今日は園で何があるのだろう、親と離れたくない、また嫌なことがあるかもしれない。そうした漠然とした不安が、朝の支度への抵抗として現れることもあると考えられています。

朝は忙しいので、「早く」と言ってしまいます。

朝はどの家庭も忙しいですよね。どうして朝は癇癪が起こりやすいのか説明します。
朝の支度で癇癪になる具体的な理由
朝の支度で癇癪になる理由は、子どもによって、状況によって様々です。けれども、いくつかの共通する背景があると考えられています。
一つの可能性として、体がまだ目覚めきっていないという生理的な問題が挙げられます。睡眠が十分でなかったり、睡眠の質が良くなかったりすると、朝の目覚めは悪くなる傾向があります。そんな状態で着替えや食事を求められても、体が言うことを聞かない場合があります。その不快感やだるさが、癇癪として表れることがあるのです。
また、感覚の問題もあると考えられています。寝起きは感覚が過敏になっていることがあり、服のタグが気になる、靴下の縫い目が痛い、髪を触られるのが嫌だ、という感覚的な不快感が強く出る場合があります。大人には些細なことでも、子どもにとっては耐えがたい刺激になることがあるのです。
さらに、朝の支度には選択と決断の連続があります。今日は何を着るのか、何を食べるのか、どの靴を履くのか。そうした小さな決断を次々と求められることが、子どもにとっては大きな負担になる場合があります。まだ頭が働いていない状態で選択を迫られると、混乱して癇癪を起こすことがあるのです。
そして、親の焦りや苛立ちが、子どもに伝わっていることもあります。時間がないという緊張感、早くしなければという焦り。その空気を敏感に感じ取った子どもは、プレッシャーを感じて余計に動けなくなることがあります。そして、動けない自分に対する苛立ちが、癇癪として爆発する場合があるのです。
朝の支度をめぐる悪循環
朝の支度で癇癪になる理由を考えるとき、そこには悪循環が存在していることがあります。
子どもが支度をしない。親が焦って急かす。子どもはプレッシャーを感じて癇癪を起こす。癇癪の対応に時間がかかり、さらに遅れる。親はますます焦る。その焦りがまた子どもに伝わる。こうした連鎖が、毎朝のように繰り返されていく可能性があるのです。
そして、この悪循環が続くと、朝の支度そのものが子どもにとって嫌な時間になってしまう場合があります。朝になると怒られる、急かされる、嫌な気持ちになる。そうした記憶が積み重なることで、支度を始める前から拒否反応が出るようになることもあります。
また、親自身も、朝が憂鬱な時間になってしまうことがあります。また今日も癇癪が起きるのではないか、また遅刻してしまうのではないか。その予期不安が、親の心を緊張させ、その緊張がさらに子どもに伝わっていく。こうして、負の連鎖が強化されていく可能性があるのです。
朝の支度を少しだけ楽にする視点
朝の支度で癇癪になる理由が分かったとしても、すぐに状況が変わるわけではありません。けれども、少しだけ視点を変えることで、朝の時間が少しだけ楽になることがあります。
まず、起床時間を見直してみる。ギリギリの時間に起こすのではなく、少しだけ余裕を持った時間に起こすことで、子どもが目覚めるまでの時間を確保できます。その数分の余裕が、朝の空気を変える可能性があります。
また、前日の夜に準備できることは準備しておく。着る服を決めて並べておく、持ち物をまとめておく、朝食のメニューを決めておく。朝にやるべきことを減らすだけでも、子どもの負担は軽くなる場合があります。
そして、支度の順番を固定してパターン化する。起きたらまずトイレ、次に着替え、それから朝食。順番が決まっていると、子どもは次に何をすればいいのか予測でき、不安が減ることがあります。予測できることは、子どもに安心感を与えることが多いとされています。
さらに、選択肢を減らす工夫も効果的な方法の一つです。「今日は何を着る?」と無限の選択肢を与えるのではなく、「このシャツとこのシャツ、どっちがいい?」と二つに絞る。選択の負担が減ることで、スムーズに決断できることがあります。
ただし、こうした工夫をしても癇癪が起きることはあります。それは工夫が足りなかったからではなく、その日の子どもの状態や気分によるものです。完璧を目指す必要はありません。
癇癪が起きてしまったときの向き合い方
どんなに工夫をしても、朝の支度で癇癪になることはあります。そんなとき、時間がない中でどう対応すればいいのか、悩むこともあるでしょう。
まず知っておきたいのは、癇癪の最中に説得しても効果がない場合が多いということです。「早くしないと遅れるよ」「みんな待ってるよ」そうした言葉は、感情が高ぶっている子どもには届かないことが多いとされています。むしろ、プレッシャーが増して余計に泣き叫ぶことがあります。
そんなときは、一度立ち止まる勇気も必要かもしれません。数分だけでも、子どもの気持ちが落ち着くのを待つ。その数分で遅刻するかもしれませんが、無理に引きずって連れて行くよりも、結果的に早く家を出られることもあります。
そして、癇癪が少し落ち着いたら、「着替えるの嫌だったね」「眠かったね」と、子どもの気持ちを短い言葉で受け止めてみる。それだけで、子どもは「分かってもらえた」と感じ、次の行動に移りやすくなる場合があります。
また、時には完璧を諦めることも大切です。朝ごはんを全部食べなくても、おにぎりを持たせて車や園で食べてもらう。パジャマのまま家を出て、園で着替える。そうした柔軟な対応が、その日を乗り切る助けになることもあります。

まずは私が落ち着くことが大切ですね。
自分を責めないでほしい
朝の支度で癇癪になる理由が分かっても、毎朝の大変さがすぐに解消されるわけではありません。そして、うまくいかない朝が続くと、親は自分を責めてしまうことがあります。
もっと早く起きていれば、もっと穏やかに声をかけていれば、もっと上手に関わっていれば、状況は違っていたのではないか。そんな後悔が頭をよぎることもあるでしょう。
けれども、朝の支度で癇癪になるのは、親の関わり方が悪いからではないと考えられています。子どもの発達段階、生理的な状態、その日の気分、様々な要因が複雑に絡み合った結果です。完璧に対応できる親などいないのです。
時には怒鳴ってしまうこともあるでしょう。時には泣きたくなることもあるでしょう。それは決して失格ではありません。時間に追われながら、子どもの気持ちに寄り添おうとする。その両立の難しさの中で、親も精一杯頑張っているのです。
もし朝の支度での癇癪があまりにも激しく、毎日のように続いて生活に大きな支障が出ているようであれば、その背景に何か特別な理由がないか、専門家に相談してみることも一つの選択肢です。睡眠の問題、感覚の過敏さ、不安の強さなど、何か支援できることがある可能性もあります。
年齢によって、朝の支度での癇癪の現れ方も変わっていくことが一般的です。もし癇癪そのものについてもっと理解を深めたいと感じたら、年齢別の癇癪の特徴を知ることも助けになるかもしれません。
朝の支度で癇癪になる理由は様々ですが、それは必ずしもずっと続くものではありません。子どもは少しずつ成長し、朝の支度もできるようになっていく可能性があります。今は大変でも、この時期はいつか過ぎていくのです。焦らず、自分を責めすぎず、できる範囲で工夫しながら、一日ずつ歩んでいけたらと思います。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うもではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。
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子どもの癇癪については、
年齢・状況・関わり方ごとに整理したまとめページがあります。
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