
こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。
はじめに
お風呂を嫌がり、癇癪になる場面に悩む家庭は多くあります。
この記事では、お風呂場面で癇癪が起きやすい理由を整理し、無理に押し切らないための視点を紹介します。
夕方になると始まる、憂鬱な時間
お風呂を嫌がって癇癪を起こすとき、親は毎日のように同じ戦いを繰り返しているかもしれません。「お風呂入るよ」と声をかけた瞬間に逃げ出す。無理に連れて行こうとすると激しく抵抗する。浴室の前で泣き叫び、体を硬直させて動かなくなる。そんな光景が夕方のたびに繰り広げられることがあります。
やっとの思いで浴室に入れても、シャンプーを嫌がり、体を洗わせてくれず、お湯をかけると暴れ出す。結局、お風呂の時間だけで一時間以上かかってしまうこともあるでしょう。その後には夕食の準備も、寝かしつけもある。時計を見るたびに、どんどん遅くなっていく時間に焦りを感じます。
「どうしてこんなに嫌がるのだろう」「他の子どもはちゃんと入っているのに」そんな思いが頭をよぎり、疲れ切った心で子どもに向き合う。その繰り返しに、親自身が限界を感じることもあるのではないでしょうか。
お風呂を嫌がって癇癪を起こす背景
お風呂を嫌がって癇癪を起こすとき、その背景には様々な理由が隠れています。子どもにとって、お風呂は親が思う以上に大きなハードルになることがあると考えられています。
まず、感覚的な不快感があります。水の温度、水圧、シャンプーの匂い、泡の感触、タオルの肌触り。お風呂という空間には、たくさんの感覚刺激が詰まっています。感覚が敏感な子どもにとって、それらの刺激は時に耐えがたいものになる場合があります。顔に水がかかる感覚が怖い、シャンプーが目に染みるのが嫌だ、体を洗われる感触が不快だ。そうした感覚的な理由が、お風呂への強い拒否につながることがあるのです。
また、お風呂に入ることは、今やっていることを中断しなければならないということです。遊びに夢中になっているとき、テレビを見ているとき、何かに集中しているとき。その楽しい時間を終わらせてお風呂に入ることは、子どもにとって大きな損失のように感じられる場合があります。まだ時間の感覚が育っていない子どもにとって、「後でまた遊べる」という見通しを持つことは難しく、今この瞬間の中断が全てを失うことのように思えてしまうことがあるのです。
さらに、お風呂という場所そのものへの不安もあると考えられています。滑りやすい床、響く音、閉ざされた空間。何となく怖いという漠然とした不安が、お風呂への抵抗として現れる場合があります。特に、過去にお風呂で怖い思いをしたことがある子どもは、その記憶が残っていて、お風呂そのものを避けようとすることがあります。

何も考えずに「早く風呂に入って」と言っていました。
年齢によって変わる理由
お風呂を嫌がって癇癪を起こす理由は、年齢によっても変化していくことが多いとされています。
2歳から3歳頃の子どもは、自分の意思が強くなる時期です。「入りたくない」という気持ちを貫き通したい、自分で決めたいという思いが強く、親の指示に従うこと自体に抵抗することがあります。お風呂の内容が嫌なのではなく、「言われたから入る」という状況が嫌である場合があるのです。
4歳から5歳になると、遊びへの集中力が高まる傾向があります。今やっていることを中断させられることへの不満が、より明確になってくることが多いとされています。また、この年齢になると「後で」「ちょっと待って」といった時間の引き延ばしを試みるようになり、それが許されないことで癇癪につながることもあります。
小学生になると、理屈では理解していても感情がついていかないという状況が生まれる場合があります。お風呂に入らなければならないことは分かっている、でも面倒くさい、まだ入りたくない。その葛藤の中で、癇癪のような激しい反応が出ることがあるのです。
お風呂の時間を少しだけ楽にする工夫
お風呂を嫌がって癇癪を起こすとき、完全に嫌がりをなくすことは難しいかもしれません。けれども、少しの工夫で、お風呂の時間が少しだけ楽になる可能性があります。
まず、お風呂に入るタイミングを見直してみる。遊びに夢中になっているときに突然声をかけるのではなく、遊びが一段落したタイミングを見計らう。あるいは、「あと五分遊んだらお風呂ね」と予告をしておくことで、心の準備をする時間を与えることができます。
また、お風呂を楽しい場所にする工夫も効果的な方法の一つです。お風呂用のおもちゃを用意する、好きな歌を一緒に歌う、泡遊びをする。お風呂が嫌な場所ではなく、楽しいことができる場所だという印象を作っていくことが助けになる場合があります。
そして、子どもに選択肢を与えることも有効である場合があります。「先にお風呂に入る? それとも先にご飯を食べる?」「今日はどのおもちゃを持って入る?」自分で決めたという感覚が、お風呂への抵抗を和らげることがあります。
さらに、お風呂の手順を簡略化することも一つの方法です。毎日完璧に体を洗わなければならないわけではありません。今日は疲れているから、ささっと済ませる。癇癪がひどいときは、シャンプーだけして終わりにする。そうした柔軟な対応が、お互いのストレスを減らす可能性があります。
ただし、これらの工夫をしても癇癪が起きることはあります。それは工夫が足りなかったからではなく、その日の子どもの気分や体調によるものです。

子どもが自分で決めることが大切です。
癇癪が起きてしまったときの対応
どんなに工夫をしても、お風呂を嫌がって癇癪を起こすことはあります。そんなとき、どう対応すればいいのか悩むこともあるでしょう。
まず、無理やり引きずってお風呂に入れることは、避けた方がいい場合があります。それは子どもにとってお風呂がさらに怖い場所になり、次からもっと激しく抵抗するようになる可能性があるためです。
癇癪が起きたら、まずは少し待つ。子どもの気持ちが落ち着くまで、そばで見守る。「お風呂嫌だったね」「入りたくないんだね」と、気持ちを受け止める言葉をかけてみる。それだけで、子どもは「分かってもらえた」と感じ、少しずつ気持ちが落ち着いていくことがあります。
そして、落ち着いたら、再度誘ってみる。ただし、命令口調ではなく、「一緒に入ろうか」「親と入ると楽しいよ」といった優しい誘い方が効果的な場合があります。あるいは、「今日は何のおもちゃを持って入る?」と、お風呂に入ることを前提にしながらも、子どもが選べる部分を残しておく。
時には妥協も必要です。今日は本当に無理そうであれば、お風呂を諦めて体を拭くだけにする。一日くらいお風呂に入らなくても、大きな問題にはなりません。毎日完璧にこなそうとするよりも、お互いの心の余裕を保つことの方が大切な場合もあります。
感覚的な問題がある場合
お風呂を嫌がって癇癪を起こす背景に、感覚の過敏さがある場合は、少し違ったアプローチが必要になることがあります。
水の温度が熱すぎる、あるいはぬるすぎると感じる子どもには、好みの温度を見つける必要があります。シャワーの水圧が強すぎると感じる子どもには、水圧を弱めたり、手桶でかけたりする方法もあります。
シャンプーの匂いが苦手な子どもには、無香料のものに変える。タオルの感触が嫌な子どもには、柔らかい素材のものを選ぶ。顔に水がかかるのが怖い子どもには、最初から「顔は濡らさない」と約束しておく。
こうした感覚的な配慮をすることで、お風呂への抵抗が和らぐ可能性があります。ただし、何が子どもにとって不快なのかを見つけるには、時間がかかることもあります。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつその子どもに合った方法を見つけていくしかありません。
もし感覚の過敏さが非常に強く、日常生活の様々な場面で困難さが出ているようであれば、専門家に相談してみることも一つの選択肢です。感覚統合の視点から、その子どもに合った支援方法を一緒に考えることができる場合があります。

感覚の過敏さについて初めて知りました。
一人で抱え込まないでほしい
お風呂を嫌がって癇癪を起こすとき、親は毎日の疲れの中で、一人で対応し続けています。家族に頼めることがあれば、時には代わってもらうことも大切です。お父さんとお風呂に入ると、意外とすんなり入ることもあります。いつもと違う人、いつもと違うやり方が、子どもの気持ちを切り替えるきっかけになる場合があるのです。
また、お風呂の時間を少し変えてみることも効果的な場合があります。夕食の前に入れる、寝る直前に入れる。その日の流れに合わせて柔軟に調整することで、子どもの抵抗が減ることもあります。
そして、自分を責めすぎないことも大切です。お風呂を嫌がるのは、親の関わり方が悪いからではないと考えられています。子どもの個性や感覚、その日の気分によるものです。完璧にこなそうとしなくても、一日一日を乗り越えていければ、それで十分なのです。
もし癇癪が非常に激しく、お風呂だけでなく他の日常的なケアにも強い抵抗を示すようであれば、その背景に何か特別な理由がないか、専門家に相談してみることも選択肢の一つです。
年齢と共に、お風呂への抵抗は変化していくことが一般的です。もし癇癪そのものについてもっと理解を深めたいと感じたら、癇癪全般についての理解を深めることも助けになるかもしれません。
お風呂を嫌がって癇癪を起こすとき、それは子どもなりの理由があっての反応です。その理由を理解しながら、少しずつ工夫を重ねていく。完璧を目指さず、できる範囲で向き合っていく。その積み重ねが、やがてお風呂の時間を少しだけ楽にしてくれる可能性があります。焦らず、自分を責めず、一日ずつ歩んでいけたらと思います。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うもではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。
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年齢・状況・関わり方ごとに整理したまとめページがあります。
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