子どもの言葉が遅いのはなぜ?心理と発達から見る理由

ことばの遅れ
ふくろう
ふくろう

こんにちは
臨床心理士・公認心理師のふくろうです。

子どもの言葉がなかなか出てこないとき

同じ月齢の子が「ママ」「ワンワン」と言葉を口にしているのに、うちの子はまだ喃語のまま。健診で「様子を見ましょう」と言われても、家に帰ればやはり気になってしまう。そんな夜もあるかもしれません。

子どもの言葉が遅いのはなぜだろうと考えるとき、多くの方が「何か問題があるのではないか」と不安になることがあります。けれど実際には、言葉の現れ方には本当に多様な道筋があって、その背景にもさまざまな理由が重なり合っていることが多いとされています。

ここでは、言葉の発達に影響を与えうる要因や心理的な背景について、少し整理してお話しできればと思います。

言葉が育つには、いくつもの力が必要になる

言葉を話すということは、実はとても複雑な営みです。音を聞き分ける力、口や舌を動かす力、誰かに何かを伝えたいという気持ち、そして周りの人との関わりを通じて得られる経験。これらがゆるやかに絡み合いながら、言葉は育っていくと考えられています。

たとえば、耳から入ってくる音の情報を整理する力がゆっくり育つ子どももいます。たくさんの音が一度に聞こえる環境では、特定の言葉を拾い上げることが難しく感じられることもあるでしょう。また、口の周りの筋肉や舌の動きを調整することに時間がかかる場合もあります。言いたいことがあっても、それを音にするまでに少し準備が必要な子どももいるのです。

それから、「伝えたい」という気持ちそのものが芽生えるタイミングにも、一人ひとりのペースがあります。周囲の人との関わりのなかで安心感を十分に味わい、自分の気持ちが受け止められる経験を重ねることで、初めて「言葉で伝えてみよう」という意欲が育つこともあるとされています。

こうした力は、どれか一つが欠けているというよりも、それぞれが少しずつ違うテンポで育っているということなのかもしれません。

気質や環境との関わりも影響する

子どもには生まれ持った気質があります。新しいことに慎重な子、じっくり観察してから動き出す子、周りの刺激に敏感な子。こうした個性は、言葉の現れ方にも影響を与えることがあると考えられています。

たとえば、周囲の様子を丁寧に見て学ぶタイプの子は、十分に理解してから言葉を使い始めることがあります。声を出すことよりも、静かに見守ることを好む子もいるでしょう。そういう子どもにとっては、言葉が遅いというよりも、「まだ出すタイミングではない」と感じているのかもしれません。

また、家庭や保育の場での関わり方も、言葉の育ちに関係してくる場合があります。大人が先回りして子どもの欲求をすべて満たしてしまうと、子どもが「言葉で伝える必要性」を感じにくくなることもあります。逆に、言葉を引き出そうとして焦ってしまうと、子どもが緊張してしまうこともあるかもしれません。

環境そのものに良い悪いがあるのではなく、その子どもにとって言葉を使う動機がどのように育まれているかという視点が大切になります。

こころの育ちと言葉の関係

言葉は、こころの動きと深くつながっていると考えられています。安心して過ごせる関係のなかで、自分の気持ちが受け止められる経験が積み重なると、子どもは「伝えてみたい」という気持ちを自然と持つようになることが多いとされています。

一方で、不安や緊張を抱えやすい状況が続いていると、言葉よりも先に体や表情で気持ちを表現する方が自然になることもあります。たとえば引っ越しや家族の変化、環境の移行期などには、言葉の発達が一時的に足踏みすることもめずらしくありません。

それは発達が止まったわけではなく、今は別のことに心のエネルギーを使っているということなのです。言葉が出ないことを「遅れ」と捉えるのではなく、子どもが今どんなふうに世界を感じ取っているのかに目を向けると、少し見え方が変わってくるかもしれません。

「遅い」と感じるときに、親ができること

子どもの言葉がゆっくりだと感じるとき、親はどうしても不安になることがあります。そして「何かしなければ」と焦りを感じることもあるでしょう。でも、焦りや不安は、知らず知らずのうちに子どもに伝わってしまうものです。

まずは、今その子が使っているコミュニケーションの方法に目を向けてみてください。言葉がなくても、表情や仕草、視線で伝えようとしていることがあるはずです。それを丁寧に受け取り、「わかったよ」と応えていく関わりが、実は言葉の土台を育てることにつながる場合があります。

また、言葉を無理に引き出そうとするのではなく、日常のなかでゆったりと言葉に触れる機会を大切にすることも助けになることがあります。絵本を一緒に見たり、散歩で見たものを穏やかに言葉にしたり。そうした積み重ねが、いつか子どもの中で言葉として花開く準備になります。

そして、どうしても不安が大きくなったときには、一人で抱え込まず、専門家に相談してみることも選択肢の一つです。相談することは弱さではなく、子どもと自分を大切にする行動です。

言葉の遅れには、必ず理由がある

子どもの言葉が遅いとき、その背景には必ず理由があると考えられています。それは発達のペースかもしれないし、気質や環境との兼ね合いかもしれません。あるいは、何か支援が必要なサインかもしれません。

けれど、どんな理由であっても、それはその子がダメだということではありません。今その子が、自分なりのやり方で世界と関わり、成長しようとしているということです。

親であるあなたが不安になるのも、当然のことです。その不安を抱えながらも、目の前の子どもをそのまま見つめ続けることは、決して簡単なことではありません。でも、あなたのその姿勢そのものが、子どもにとっての安全な場所になっている場合があります。

言葉がすべてではないし、今の姿がすべてでもありません。子どもは、これからもずっと育ち続けます。そのプロセスに、少しだけ寄り添う気持ちで向き合えたなら、きっと何か見えてくるものがあるはずです。

ふくろう
ふくろう

ここまで読んでくれてありがとう。


※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うものではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

このブログについて

タイトルとURLをコピーしました