
こんにちは
臨床心理士・公認心理師のふくろうです。
就学を控えて、言葉のつたなさが気になる
5歳になると、多くの子どもたちはかなり流暢に話すようになり、複雑な文章で自分の考えや経験を伝えられるようになります。友達との会話も弾み、親とのやりとりもスムーズになる時期です。
でも、うちの子は話すことはできるけれど、何となく言葉がつたない。文章がうまくつながらなかったり、言いたいことがうまく伝えられなかったり。5歳で言葉がつたないと感じたとき、来年の小学校入学を考えると、不安が大きくなることもあるかもしれません。
園での様子を聞いても「お友達とはうまく遊べていますよ」と言われるけれど、家での会話を聞いていると、やはり同じ年齢の子と比べて幼く感じる。このまま小学校に上がって大丈夫だろうか。そんな心配を抱えている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、臨床心理士として、5歳で言葉がつたないと感じる背景や、その意味について考えていきたいと思います。
「つたない」という感じ方はさまざま
まず、「5歳で言葉がつたない」という状況にも、実はいろいろな形があります。
語彙が少なく、表現の幅が狭いと感じる場合もあります。同じ言葉ばかり使っていたり、新しい言葉をなかなか覚えられなかったり。「あれ」「それ」といった指示語が多く、具体的な名前が出てこないこともあるでしょう。
文章の組み立てがうまくいかない場合もあります。「昨日ね、公園でね、遊んでね」と、助詞の使い方が不自然だったり、文が途中で止まってしまったり。話の順序がバラバラで、何を言いたいのかわかりにくいこともあります。
説明する力が弱い場合もあります。「何して遊んだの?」と聞いても「楽しかった」としか答えられなかったり、出来事を順序立てて話すことが難しかったり。
また、発音は問題ないけれど、話し方全体が幼い印象を与える場合もあります。単語の選び方や話すテンポ、声のトーンなど、総合的に「何となく幼い」と感じられることもあるでしょう。
どの形であっても、その背景には、その子なりの理由があります。
言葉の発達には個人差がある
5歳という年齢でも、言葉の発達には依然として個人差があります。
この時期になると、多くの子どもは比較的流暢に話せるようになっているため、差が目立ちやすくなります。でも、発達のペースがゆっくりであるということと、何か問題があるということは、必ずしも同じではありません。
言葉の発達は、いくつもの要素が複雑に絡み合って進んでいきます。理解する力、表現する力、記憶する力、考えをまとめる力。こうした力のどれかが、少しゆっくりと育っているのかもしれません。
また、興味や関心の向き方も影響します。言葉でのコミュニケーションに強い興味を持つ子は、自然と言葉が豊かになっていきます。一方、体を動かすことや何かを作ることに夢中な子は、言葉の発達に注ぐエネルギーが相対的に少なくなることもあるでしょう。
環境も関係してきます。たくさんの言葉に触れる機会があった子と、そうでない子では、語彙の豊かさに差が出ることもあります。
語彙や表現の幅が狭い理由
5歳で言葉がつたないと感じるとき、語彙の少なさが気になることもあるかもしれません。
語彙が増えるためには、新しい言葉に触れる機会と、その言葉を使う必要性の両方が必要です。絵本を読む時間が少なかったり、親との会話が限られていたりすると、触れる言葉の種類が限定されてしまいます。
また、新しい言葉を覚えることそのものに時間がかかる子もいます。一度聞いただけでは覚えられず、何度も繰り返し聞いて、ようやく自分のものになる。そんなペースで言葉を増やしている子もいるのです。
言葉を覚えていても、それを使うことが苦手な子もいます。頭の中には言葉があるのに、とっさに引き出すことができない。そのため、いつも同じ簡単な言葉ばかり使ってしまう。そんな状態もあります。
語彙が少ないことは、必ずしも知的な能力の問題ではありません。経験や環境、あるいは言葉を記憶したり引き出したりする力の発達ペースの違いが関係していることも多いのです。
文章を組み立てる力の発達
言葉がつたないと感じる理由として、文章を組み立てる力がゆっくりと育っている可能性もあります。
5歳になると、多くの子どもは「昨日、公園で友達とかくれんぼをして遊んだよ」というように、いくつかの情報を適切な順序で組み立てて話せるようになります。でも、この力には個人差があります。
出来事の順序を整理することが苦手な子もいます。頭の中ではいろいろなことが浮かんでいるのに、それを時系列に並べて話すことが難しい。結果として、話があちこちに飛んでしまったり、何を言いたいのかわかりにくくなったりします。
助詞の使い方も、実は複雑な言語能力を必要とします。「が」「を」「に」「で」といった助詞を適切に使い分けるには、文法のルールを理解している必要があります。この理解がまだ十分でないと、文章が不自然になってしまうのです。
主語や述語を省略しすぎて、相手に伝わりにくいこともあります。自分の頭の中では文脈がつながっているのに、相手はその前提を共有していない。そのズレに気づかないまま話してしまうこともあるでしょう。
こうした力は、時間をかけてゆっくりと育っていくものです。
経験を言葉にする力
言葉のつたなさは、経験を言葉に変換する力とも関係しています。
「今日何したの?」と聞かれたとき、自分の経験を思い出して、それを言葉で表現するという作業が必要になります。この作業には、記憶する力、重要なことを選び取る力、それを適切な言葉で表現する力など、いくつもの能力が関わっています。
経験そのものは豊かにあっても、それを言葉にすることが苦手な子もいます。楽しかった気持ちは確かにあるのに、「楽しかった」という一言以上に広げることができない。そんなもどかしさを抱えていることもあるでしょう。
また、自分の気持ちを言葉にすることも、5歳という年齢ではまだ発達途中です。嬉しい、悲しい、怒っているといった基本的な感情は表現できても、「ちょっと寂しい」「なんとなく不安」といった微妙な感情を言葉にすることは、大人でも難しいものです。
経験を言葉にする力は、日々の対話の中で少しずつ育っていきます。
社会性や対人関係との関わり
言葉のつたなさの背景に、社会性の発達が関係していることもあります。
会話というのは、相手とのやりとりです。相手が何を知りたいのか、どこまで説明すればわかってもらえるのか。そうした相手の視点に立つ力が必要になります。
この「相手の立場に立つ」という力は、5歳でも発達途中です。自分の言いたいことばかり話して、相手の反応を見ていないこともあります。相手がわかっていないのに、どんどん話を進めてしまうこともあるでしょう。
友達との関わりが少なかったり、会話のキャッチボールを練習する機会が限られていたりすると、こうした力を育てる経験が不足することもあります。
一方で、周囲の子どもたちとは楽しく遊べているのに、大人との会話だけがつたないように見える場合もあります。これは、子ども同士のコミュニケーションと、大人との会話では求められる力が少し違うためかもしれません。
不安や緊張の影響
心理的な要因が、言葉のつたなさに影響していることもあります。
緊張しやすい子は、話すときに頭が真っ白になってしまうことがあります。家では普通に話せるのに、外では途端に言葉が出てこなくなる。知らない人の前では、極端に話が幼くなる。そんなこともあるでしょう。
また、失敗を恐れる気持ちが強い子は、うまく言えないなら話さないという選択をすることもあります。完璧に話せる自信がないから、簡単な言葉だけで済ませてしまう。そうすると、言葉を使う練習の機会が減り、結果として言葉がつたないままになってしまうこともあります。
環境の変化やストレスが、一時的に言葉の発達に影響を与えることもあります。弟や妹が生まれた、引っ越した、園でうまくいかないことがあった。そんなときには、一時的に言葉が退行したように見えることもあるのです。
心理的な安定が、言葉の流暢さにも影響を与えるということです。
小学校入学に向けてできること
5歳という時期は、就学を控えて不安が大きくなりやすい時期でもあります。
でも、小学校に入学するまでに、すべての子が完璧に話せるようになる必要はありません。学校は、子どもたちがさらに成長していく場でもあります。
それでも、今からできることはあります。
日常の会話の中で、子どもの話を丁寧に聞くことです。途中で遮らず、急かさず、最後まで聞く。そして、「○○があって、△△したんだね」と整理して返してあげる。こうした関わりが、話を組み立てる力を育てます。
絵本や物語を一緒に楽しむことも効果的です。読んだ後で「どんなお話だった?」と聞いてみたり、「この子はどんな気持ちだったと思う?」と話し合ってみたり。そんな対話が、言葉で表現する力を育てていきます。
日々の経験を言葉にする機会を作ることも大切です。「今日は何が楽しかった?」「どんなことがあった?」と聞きながら、一緒に一日を振り返る。そうした習慣が、経験を言葉にする力を少しずつ育てます。
焦らず、でも意識的に、言葉に触れる時間を大切にしていく。それが、今できることです。
専門家に相談するタイミング
5歳で言葉がつたないとき、就学を控えているからこそ、専門家の意見を聞いてみることも一つの選択です。
言葉のつたなさが、日常生活や友達との関わりに大きく影響している場合には、早めに相談してみるとよいでしょう。また、言葉だけでなく、全体的な発達についても気になることがある場合には、就学前の今、一度きちんと評価してもらうことが、入学後のサポートにもつながります。
学校によっては、入学前に相談窓口を設けているところもあります。心配なことがあれば、事前に学校に伝えておくことで、入学後にスムーズな支援を受けられる可能性もあります。
相談することは、子どもにレッテルを貼ることではありません。むしろ、その子に合った環境や支援を整えるための、大切な一歩です。
言葉は、これからも育ち続ける
5歳で言葉がつたないと感じても、それは発達が終わったということではありません。
言葉は、小学校に入ってからもずっと育ち続けます。友達との会話、授業での学び、読書の経験。そうしたすべてが、言葉を豊かにしていきます。
今つたないと感じている言葉も、これから大きく変わっていく可能性があります。環境が変わることで、急に話すことが楽しくなる子もいます。学校での学びが刺激になって、言葉が急速に育つこともあります。
焦らず、でも見守りながら、その子のペースを信じて待つこと。そして、必要なときには適切な支援を受けられるように準備しておくこと。それが、5歳の今できることです。
あなたが今感じている不安も、子どものことを大切に思うからこそ生まれているものです。その気持ちを大事にしながら、でも一人で抱え込みすぎず、周りの力も借りながら、就学という新しいステージに向けて準備していけたらと思います。
言葉は、これからもずっと育ち続けます。その成長を、少しだけゆったりとした気持ちで見守れますように。小学校という新しい環境が、その子の言葉をさらに豊かにする場になることを願っています。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに監修しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。子どもの状態について心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。
