子どもの癇癪はなぜ起きる?年齢別にわかる原因と関わり方

かんしゃく

はじめに

「また今日も癇癪を起こしてしまった」「この年齢でこんなに激しく泣くものなのだろうか」――子どもの癇癪に日々向き合っていると、そんな不安や疑問が頭をよぎることがあるかもしれません。

子どもの癇癪は、実は年齢によってその意味合いや背景が少しずつ変わっていきます。1歳の子が泣く理由と、5歳の子が怒る理由は、同じ「癇癪」という言葉で表されていても、心の中で起きていることは異なります。それぞれの年齢における発達の特徴を知ることで、子どもの行動が少し違った角度から見えてくるかもしれません。

この記事では、心理の視点から、子どもの癇癪はなぜ起きるのかを年齢ごとに整理しながら、それぞれの時期に合った関わり方のヒントをお伝えしていきます。

ふくろう
ふくろう

こんにちは

公認心理師・臨床心理士のふくろうです。

癇癪と発達の関係

子どもの癇癪を理解するうえで大切なのは、それが発達のプロセスと深く結びついているという視点です。癇癪は決して「問題行動」ではなく、むしろその年齢なりの成長の証でもあります。

乳幼児期から学童期にかけて、子どもは身体的にも精神的にも驚くべき速さで変化していきます。その過程で、自分の感情を認識する力、それを言葉で表現する力、相手の気持ちを想像する力、欲求を我慢する力などが、段階を追って育っていきます。

しかし、こうした力は一度に完成するわけではありません。ある部分は成長しているのに、別の部分はまだ未熟であるというアンバランスな状態が続きます。このアンバランスさが、癇癪という形で表れることが多いのです。

また、それぞれの年齢には特有の発達課題があります。自立への欲求、他者との関係づくり、ルールの理解――こうした課題に取り組む中で生じる葛藤やストレスが、癇癪の背景にあることを知っておくと、子どもへの見方が少し柔らかくなるかもしれません。

0歳から1歳:泣くことが唯一のコミュニケーション

この時期の赤ちゃんにとって、泣くことは生きるための手段です。お腹が空いた、おむつが濡れて不快、眠いのに眠れない、暑い、寒い、痛い――こうした身体的な不快感を伝える方法は、泣くことしかありません。

0歳から1歳の癇癪のように見える激しい泣きは、多くの場合、生理的な欲求が満たされていないことへの反応です。言葉で説明することも、少し待つこともできない段階ですから、不快を感じたらすぐに泣いて訴えるのは自然なことです。

また、この時期の赤ちゃんは、自分と他者の境界もまだ曖昧です。抱っこしてもらっている安心感が急に途切れたり、見慣れない場所に連れて行かれたりすると、不安から激しく泣くこともあります。

この年齢での関わり方として大切なのは、まず「泣いていいんだよ」という安心感を伝えることです。すぐに泣き止ませようと焦るのではなく、抱っこをしたり、優しく声をかけたりしながら、赤ちゃんの訴えを受け止める姿勢が信頼関係の土台になります。

生活リズムを整えること、授乳や睡眠のタイミングを観察することも、泣きを減らす助けになります。ただし、どんなに工夫しても泣く時期はあります。それは赤ちゃんが一生懸命に自分の気持ちを伝えようとしている証でもあるのです。

1歳から3歳:自我の芽生えと「イヤイヤ期」

1歳を過ぎると、子どもは「自分」という存在を少しずつ意識し始めます。「これがしたい」「あれは嫌だ」という意思が明確になり、それを表現しようとする力も育ってきます。いわゆる「イヤイヤ期」と呼ばれる時期です。

この時期の癇癪は、「自分でやりたい」という欲求と、まだそれを実現できない能力とのギャップから生まれることが多くあります。靴を自分で履きたいのにうまくいかない、ボタンを留めたいのに指が動かない――そんなもどかしさが、激しい怒りや泣きとして表れます。

また、言葉の発達途上にあるため、自分の気持ちを正確に伝えられないことも癇癪の大きな要因です。「もっと遊びたい」「このおもちゃがほしい」という思いはあっても、それを言葉で説明する力が追いついていません。結果として、泣く、叫ぶ、物を投げるといった行動で表現するしかなくなります。

さらに、この年齢の子どもは感情のコントロールがほとんどできません。嬉しいときは全身で喜び、悲しいときは全身で泣きます。大人のように「少し我慢しよう」「後で考えよう」という調整ができないため、感情がそのまま行動に直結するのです。

関わり方としては、まず子どもの「やりたい気持ち」を認めることが出発点になります。「自分でやりたかったんだね」「悔しかったね」と、気持ちに名前をつけて返してあげることで、子どもは少しずつ自分の感情を理解していきます。

そのうえで、できる範囲で選択肢を与えることも有効です。「赤い靴と青い靴、どっちにする?」「ご飯の前にお風呂?それとも後?」といった小さな選択を通じて、自分で決める経験を積むことができます。

ただし、すべてを子どもの思い通りにする必要はありません。危険なことや、譲れないルールについては、穏やかに、でも一貫した態度で伝えることが大切です。その際も、頭ごなしに「ダメ」と言うのではなく、「今はできないけれど、こっちならできるよ」と代替案を示すと、子どもも受け入れやすくなります。

3歳から5歳:社会性の芽生えと自己主張のバランス

3歳を過ぎると、言葉の力が飛躍的に伸び、自分の気持ちをある程度言葉で表現できるようになってきます。同時に、保育園や幼稚園といった集団生活の中で、他の子どもたちとの関わりが増え、社会的なルールを学び始める時期でもあります。

この年齢の癇癪は、「自分の思い」と「周囲の期待やルール」との間で揺れ動く葛藤から生まれることが多くなります。友達とおもちゃを譲り合わなければならない場面、順番を待たなければならない場面――こうした状況で、自分の欲求を抑えることの難しさに直面します。

また、大人からの期待が高まる時期でもあります。「もうお兄さんなんだから」「お姉さんだからできるよね」という言葉をかけられることが増え、子どもは無意識のうちにプレッシャーを感じることがあります。そのプレッシャーが癇癪という形で表れることもあります。

さらに、この時期の子どもは想像力が豊かになる一方で、現実と空想の境界がまだ曖昧です。怖い夢を見たり、不安な想像が膨らんだりして、それが情緒の不安定さにつながることもあります。

関わり方としては、まず「気持ちはわかるけれど、行動には別の方法がある」ことを伝えていくことが鍵になります。「おもちゃを取られて嫌だったんだね。でも叩くのは痛いから、言葉で『貸して』って言おうね」といった具合に、感情と行動を分けて考える手助けをします。

また、癇癪が起きた後に、落ち着いてから一緒に振り返る時間を持つことも大切です。「さっきはどうして怒っちゃったのかな?」「次はどうしたらいいと思う?」と、子ども自身に考えさせることで、感情を整理する力や問題解決の力が育っていきます。

集団生活でのストレスが背景にある場合は、家庭では安心して甘えられる時間を意識的に作ることも重要です。外で頑張っている分、家では少し緩めてあげることが、心の安定につながります。

5歳から7歳:学校生活への移行期の揺らぎ

5歳を過ぎると、多くの子どもが就学を意識し始めます。保育園や幼稚園から小学校への移行は、環境の変化だけでなく、求められる行動や態度にも大きな変化をもたらします。

この時期の癇癪は、新しい環境への不安や、学習や人間関係でのつまずきから生じることが増えてきます。文字を書くのが難しい、計算がわからない、友達とうまく遊べない――こうした小さな失敗体験の積み重ねが、自信を失わせ、癇癪として表れることがあります。

また、この年齢になると、子ども自身も「こんなに怒ってはいけない」と感じ始めます。しかし、まだ感情をうまくコントロールする力は発達途上です。自分でも抑えられない怒りに戸惑い、それがさらに癇癪を強めてしまうこともあります。

家庭での役割期待も変わってきます。弟や妹の面倒を見ることを期待されたり、お手伝いを任されたりする中で、「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」としての責任を感じる一方で、自分も甘えたいという葛藤を抱えることがあります。

関わり方としては、まず「失敗してもいい」という安全な環境を保つことが大切です。学校で頑張っている分、家では完璧でなくていいことを伝え、小さな成功体験を積み重ねられるよう支えます。

また、癇癪の背景に学習面や対人面での困難がある場合は、早めに担任の先生やスクールカウンセラーに相談することも選択肢のひとつです。子どもに合った支援や配慮を受けることで、状況が改善することもあります。

この時期は、感情を言葉で表現する練習を丁寧に続けることも有効です。「今、どんな気持ち?」「何が一番嫌だった?」と具体的に尋ねながら、感情に名前をつけていく作業を重ねることで、自己理解が深まっていきます。

7歳から12歳:思春期前期の心の揺れ

小学校中学年から高学年にかけては、身体的にも精神的にも思春期への準備が始まる時期です。友達関係が複雑になり、学習内容も高度になり、自分自身への評価も厳しくなっていきます。

この年齢の癇癪は、表面的には減っているように見えても、内面では強い感情の波が起きていることがあります。友達とのトラブル、成績への不安、容姿や能力への劣等感――こうした悩みを抱えながらも、それをうまく表現できずに、家庭内で爆発的に感情をぶつけることがあります。

また、親から自立したいという気持ちと、まだ頼りたいという気持ちが同居する時期でもあります。その矛盾した感情が、反抗的な態度や急な癇癪として表れることもあります。

デジタル機器やSNSとの関わりが増える時期でもあり、オンラインでのやりとりがストレスの原因になることもあります。見えないところで傷ついていたり、比較されることで自己肯定感が下がっていたりすることもあるため、注意深く見守る必要があります。

関わり方としては、まず「話したいときに話せる関係」を保つことが何より大切です。無理に聞き出そうとするのではなく、普段から何気ない会話を大切にし、子どもが安心して本音を話せる雰囲気を作ります。

また、この時期の子どもには、ある程度の自己決定の機会を与えることも重要です。自分で考え、選び、その結果を受け止める経験を通じて、責任感や自己コントロールの力が育っていきます。

ただし、明らかに様子がおかしい、癇癪が以前より激しくなった、学校に行きたがらないといった変化が見られる場合は、背景に何か大きな悩みや困難が隠れている可能性もあります。そのときは、無理に解決しようとせず、専門家の力を借りることも視野に入れてください。

「発達のプロセス」と捉えると気持ちが楽になります。

年齢を超えて共通する大切なこと

ここまで年齢ごとの特徴を見てきましたが、どの年齢にも共通して大切なことがあります。

ひとつは、癇癪を起こしている子どもを責めないことです。子ども自身も、癇癪を起こしたくて起こしているわけではありません。自分でもコントロールできない感情に振り回されているのです。

もうひとつは、親自身が完璧でなくてもいいということです。毎回理想的な対応ができるわけではありませんし、疲れていて余裕がないときもあります。それでいいのです。大切なのは、失敗しても修正し、また明日から向き合おうとする姿勢です。

そして、子どもの発達には個人差があることを忘れないでください。同じ年齢でも、成長のペースや特性は一人ひとり違います。他の子と比べるのではなく、子ども自身の変化や成長を見つめることが、何よりの支えになります。

おわりに

子どもの癇癪はなぜ起きるのか――その答えは、年齢によって、そして一人ひとりの子どもによって異なります。けれども共通しているのは、癇癪の背景には必ず理由があり、それは成長のプロセスの一部だということです。

年齢ごとの発達の特徴を知ることは、子どもの行動を理解する手がかりになります。ただし、それは「こうあるべき」という型にはめるためではなく、目の前の子どもをより深く理解するための視点として受け取っていただければと思います。

日々の子育ての中で迷ったり、疲れたりすることは当然のことです。そんなときは、一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら、子どもと一緒にゆっくり歩んでいってください。

ふくろう
ふくろう

ここまで読んでくれてありがとう。


※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに監修しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。子どもの状態について心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

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