
こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。
まだ続いている、という現実
5歳の癇癪が治らないと感じている親は、もしかしたら長い道のりを歩いてきたのかもしれません。2歳の頃から始まった激しい感情の波が、3歳になっても、4歳になっても収まらず、そして5歳になった今もまだ続いている。周りの子どもたちは落ち着いて見えるのに、我が子だけが相変わらず泣き叫んだり、物を投げたり、激しく抵抗したりする。
「いつまで続くのだろう」「このまま小学校に入れるのだろうか」そんな不安が頭をよぎることもあるでしょう。これまで試してきたことがうまくいかず、何をしても変わらないように感じると、親自身の心も疲弊していきます。
けれども、5歳という年齢は一つの節目でもあります。この時期だからこそ見直せる関わりがあり、子どもの内側で起きていることを理解し直すことで、新しい道筋が見えてくることもあるのです。

みんなできるのにうちの子だけ…と思ってしまいます。
5歳の癇癪が治らない背景を理解する
5歳になると、多くの子どもは感情をある程度コントロールできるようになってきます。言葉で気持ちを伝えたり、我慢したり、気持ちを切り替えたりする力が育ってくる時期です。それなのに癇癪が治らないとき、そこには何らかの理由が隠れていることがあります。
一つの可能性として、子どもが日常的に感じているストレスや不安が、処理できる範囲を超えているのかもしれません。5歳になると、幼稚園や保育園での活動はより複雑になり、求められることも多くなります。集団のルールを守ること、お友達との関係を調整すること、先生の指示を理解して動くこと。こうした課題の積み重ねが、その子にとって大きな負担になっている可能性があります。
また、感情をコントロールする力そのものの育ちに、個人差があることも知っておく必要があります。同じ5歳でも、感情の調整がスムーズにできる子もいれば、まだ時間がかかる子もいます。それはその子の個性であり、能力の問題ではありません。ただ、発達のペースが周囲と違うというだけのことです。
さらに、癇癪が治らない背景には、子どもが何かを伝えようとしているのに、それがうまく届いていないという状況があるかもしれません。言葉は話せても、自分の複雑な気持ちを正確に表現するのはまだ難しい年齢です。だからこそ、癇癪という形でしか表せないことがあるのです。
日常の関わりを、少し違う角度から見てみる
5歳の癇癪が治らないとき、これまでの関わり方を少し見直してみることが助けになることがあります。ただし、それは「間違っていた」ということではなく、子どもの成長に合わせて調整していくという意味です。
たとえば、癇癪が起きる前の段階に注目してみる。癇癪は突然起きるように見えても、実はその前に小さなサインが出ていることがあります。声のトーンが変わる、体が固くなる、視線が泳ぐ。そうした変化に気づいたとき、癇癪が爆発する前に関わることができるかもしれません。「何か嫌なことがあった?」と静かに声をかけてみる。それだけで、子どもが自分の気持ちに気づくきっかけになることがあります。
また、癇癪が起きたときの対応を振り返ってみることも大切です。つい説得しようとしたり、叱ったり、無視したりしていないでしょうか。どの対応も、その瞬間の親にとっては精一杯の選択だったはずです。けれども、子どもの側から見たとき、それがどう受け取られているかを考えてみる余地はあるかもしれません。
説得は、感情が高ぶっている最中には届きません。叱ることは、子どもに「自分の気持ちは間違っている」というメッセージを与えてしまうことがあります。無視は、「誰も分かってくれない」という孤独感を深めることがあります。どれも悪意からの行動ではないけれど、意図しない影響を与えている可能性があるのです。
環境を整えることの意味
5歳の癇癪が治らないとき、子ども自身を変えようとするのではなく、周囲の環境を調整してみることも一つの方法です。
たとえば、一日のスケジュールを見直してみる。朝の準備に時間がかかりすぎて、毎日バタバタしていないでしょうか。夕方の疲れている時間帯に、たくさんのことを求めていないでしょうか。子どもが落ち着いて過ごせる時間を確保することが、癇癪の頻度を減らすことにつながることがあります。
また、選択肢を与えすぎないことも大切です。5歳になると自分で決めたいという気持ちが強くなりますが、選択肢が多すぎると逆に混乱します。「どっちがいい?」と二つの選択肢を示すだけでも、子どもにとっては十分な自己決定の機会になります。
そして、子どもが安心できる時間を意識的につくることも効果的です。一日の中で、何も求められず、ただ親と一緒にいられる時間。それがほんの数分でも、子どもの心を満たすことがあります。癇癪は、満たされない気持ちの表れであることも多いからです。

「どっちがいい?」と聞いてみるのは良いですね。

そうなんです。「自分で決めたい」という気持ちが強くなりますからね。
専門的な視点を借りることも選択肢の一つ
5歳の癇癪が治らないとき、これまで一人で頑張ってきた親にとって、誰かに相談することは勇気のいることかもしれません。「まだ様子を見ていれば大丈夫」と言われるのではないか、「育て方が悪い」と思われるのではないか、そんな不安があるかもしれません。
けれども、専門的な視点から見てもらうことは、決して弱さではありません。保健センターや子育て支援センター、発達相談の窓口などでは、子どもの様子を丁寧に聞き取り、その子に合った関わり方を一緒に考えてくれます。
もしかしたら、癇癪の背景に感覚の過敏さや、集団生活での困難さ、あるいは何か特定の不安があるかもしれません。それを専門家と一緒に整理することで、これまで見えていなかった理解が深まることがあります。そして、その理解に基づいて関わり方を調整することで、子どもの癇癪が少しずつ変化していくこともあるのです。
相談することは、子どものためでもあり、親自身のためでもあります。一人で抱え込んできた重さを少しでも軽くすることが、結果的に子どもへの関わりにも良い影響を与えます。

迷ったときは近くの相談窓口に行ってみてください。
完璧を目指さなくていい
5歳の癇癪が治らないとき、親は自分を責めてしまうかもしれません。もっと早く対応していれば、もっと適切に関わっていれば、状況は違っていたのではないか。そんな後悔が胸をよぎることもあるでしょう。
けれども、完璧な対応などというものは存在しません。どんなに丁寧に関わっても、子どもは癇癪を起こすことがあります。それは関わりの問題ではなく、その子が今、そうした表現しかできない状態にあるというだけのことです。
大切なのは、試行錯誤を続けることです。うまくいかなかったら、また別の方法を試してみる。それを繰り返しながら、少しずつその子に合った関わりを見つけていく。その過程そのものが、子どもへの理解を深めていくのです。
もし小学校入学を控えて不安が大きくなっているのであれば、学校との連携も視野に入れておくことができます。入学前に相談しておくことで、学校側も配慮を考えやすくなります。
年齢が進むにつれて、癇癪の現れ方は変化していきます。もし小学生になっても癇癪が続くようであれば、その時期特有の背景を理解することも必要になるかもしれません。
今は、長い道のりを歩いてきた自分自身を、まず認めてあげてください。5歳の癇癪が治らないことに疲れ切っているのは当然です。けれども、その疲れを感じながらも、毎日子どもと向き合い続けているあなた自身の姿を、どうか大切にしてほしいと思います。一人で抱え込まず、時には立ち止まり、必要なときには助けを求めながら、この時期を歩んでいけたらと思います。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに監修しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。子どもの状態について心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

