発達が気になる子どもとの遊び

心理

子どもの発達と遊び

小さな子どもにとって「遊び」は、ただ楽しいだけのものではありません。遊びを通して、体の使い方を覚えたり、考える力を育てたり、感情を表現する力が育ったりと、いろいろな発達が促されていきます。多くの保護者の方は、「子どもは自由に好きなように遊ぶのが一番」と考えていたり、「お友達と遊ぶほうが社会性が育つから良い」と感じていたりするかもしれません。実際に、「早くお友達と遊べるようになってほしい」と願っている方も多いでしょう。

でも実は、お友達との遊びに入っていく前に、まずは親子で遊ぶことがとても大切なのです。特に、発達が気になる子どもの場合は、親との関わりを通して少しずつ人と関わる楽しさや安心感を育てていくことが大切です。


発達が気になる子どもと遊ぶときの難しさ

発達が気になる子どもの中には、もともと人への関心が薄かったり、人と一緒に遊ぶことが難しかったりすることがあります。そうなると、親子で遊ぶことも思うようにいかないことがあるかもしれません。

たとえば、

  • 親が遊びに誘っても、子どもが反応してくれない
  • 一人遊びばかりしている
  • 一緒に遊ぼうとすると嫌がる

といった様子が見られることがあります。

すると、親御さんも「どう関わればいいの?」「無理に遊ばせても逆効果かも…」と感じてしまい、だんだん親子で遊ぶことを諦めてしまうこともあるかもしれません。こうして、子どもはますます一人で遊ぶ時間が増え、人との関わりのきっかけが減ってしまうという悪循環に陥ってしまうことがあります。


親子で遊ぶ

たしかに、発達が気になる子どもと遊ぶのは、簡単なことではないかもしれません。でも、「どうすればこの子と一緒に楽しめるか」と工夫をしていくことで、少しずつ親子で関われるようになっていく可能性は十分にあります

そこでおすすめしたいのが、「親子ふれあい遊び」です。これは、発達が気になる子どもたちのために工夫された遊びで、親子で一緒に楽しみながら、少しずつ人とのやりとりを広げていくことができます。

発達が気になる子どもと関わるとき、「どのように遊べばいいのか分からない」と感じる方も多いと思います。実は、子どもが人と関わる力にはいくつかの発達の段階があり、それぞれの段階に応じた遊び方や関わり方があります。

第1段階:人との関わりがまだ難しい時期

この段階では、子どもはまだ人と関わることにあまり関心を持っていません。おもちゃや物に強く興味を持っていても、人と一緒に遊ぶことは苦手で、一人遊びを好む傾向があります。親が近くにいても、あまり意識していなかったり、関わろうとすること自体がストレスになることもあります。

この時期は、「無理に関わろう」とするのではなく、子どもの世界にそっと寄り添いながら、「親がそばにいると安心だな」「一緒にいると楽しいかも」と感じてもらうことが大切です。

第2段階:少し人と関われるようになる時期

次の段階になると、子どもは少しずつ人と関わることができるようになってきます。たとえば、親の手を引っ張って「こっちに来て」と伝えたり、自分の望むことを行動で表そうとするようになります。

これは、子どもが「人に伝えれば、自分のしたいことがかなう」という経験をし始めているということです。つまり、「自分と相手はつながっている」と気づき始めたサインです。こうした行動が見られたら、親はできるだけその気持ちをくみ取り、「わかったよ」「それがしたいんだね」と応じてあげることが、次の発達へのステップになります。

第3段階:人とのやりとりができるようになる時期

この段階になると、子どもは相手とのやりとりができるようになってきます。たとえば、「これが欲しい」といった要求を、身ぶりや声、あるいは言葉で伝えたり、「もっと遊びたい」「まだ終わりたくない」といった気持ちを自分なりに表現するようになります。

このやりとりを通して、親子のコミュニケーションはぐんと豊かになります。「伝わる」「わかってもらえた」という経験が、子どもの自己肯定感や対人関係の土台にもなっていきます。

第4段階:言葉を使って伝えられるようになる時期

そして、さらに進んだ段階になると、子どもは人とやりとりをしながら、それに言葉を添えて話すようになります。たとえば、「ママ、見て!」「もっとやりたい!」など、自分の気持ちや思いを言葉にして伝えるようになってきます。

もちろん、この時期の言葉はまだまだ不完全かもしれません。でも、大切なのは、「自分の思いを伝えたい」「相手と通じ合いたい」という気持ちが育っていることです。

このように、親子の遊びは一足飛びにはうまくいかないかもしれませんが、段階を踏んで少しずつ進んでいけるものです。子どもの「今の状態」を知り、その段階に合った関わりをしていくことで、親子のつながりも深まり、子どもは人と関わる力を自然と育んでいけるのです。焦らず、楽しみながら取り組んでみてくださいね。

以下に、遊びの5つの段階について、保護者の方が読みやすく理解しやすいように、自然な文章の形でまとめ直しました。専門的な内容をやさしい言葉に置き換えながら、親しみやすい表現を心がけました。

発達段階に応じた遊び

子どもが発達のどの段階にいるかによって、適した遊び方や関わり方は変わってきます。無理に関わろうとするのではなく、子どもの今の状態に合った遊びを選ぶことで、親子で自然に楽しく過ごせるようになります。ここでは、親子ふれあい遊びを5つの段階に分けてご紹介します。

段階Ⅰ:人や物に関心をもつための遊び

この段階では、子どもはまだ人と関わることにあまり興味を示さず、一人で遊ぶことが多い時期です。でも、だからといって親との関わりを拒否しているわけではありません。実は、どう遊んでいいのか分からないだけなのです。ですので、親のほうから優しく声をかけたり、そっと近くで遊んでみたりして、少しずつ関わりを広げていくことが大切です。そうしたふれあいを繰り返すことで、やがて子どもは「親と一緒に遊ぶって楽しいな」と感じられるようになっていきます。

遊びのねらい

人や物に少しずつ関心を向け、人と一緒にいることが「心地よい」と感じるようになること。

おすすめの遊びと関わり方

音の出るおもちゃで注目を引く

ガラガラやボール、太鼓など、音の出るおもちゃを使って、子どもの視線を引いてみましょう。
→ 例えば、親が太鼓を「トントン」と叩き、「○○ちゃん、聞こえるかな?」とゆっくり話しかけます。

子どもの近くで静かに遊ぶ

子どもが一人遊びしているときに、すぐそばで同じようなおもちゃを使って静かに遊んでみます。
→ たとえば、子どもがブロックを積んでいるなら、親も同じように積み上げて見せるだけでOKです。

くすぐりあそびやタッチ遊び(無理のない範囲で)

「くすぐりマンが来たぞ〜!」などと言って、そっとくすぐったり、手を軽くタッチするだけでも関わりのきっかけになります。

ポイント

・視線が合わなくても大丈夫です。
・「遊ぼう!」とがんばりすぎず、近くにいるだけでも効果があります。
・子どもの反応に敏感に気づき、小さな反応を喜んであげましょう。

段階Ⅱ:人と関わりながら遊ぶ(人に少し慣れてきた時期)

この段階に入ると、子どもは少しずつ親の存在を意識して関わろうとするようになります。たとえば、手を引っぱって「こっちに来て」と伝えたり、何かを欲しがったりするようになります。ただし、まだやりとりは一方通行で、親からの呼びかけに反応するというよりは、自分の要求を伝えることで精一杯です。そこで、この時期は親子で一緒に遊ぶ時間をたくさんつくり、楽しい関わりを重ねることがとても大切です。また、最初は「お菓子ちょうだい」などの限られた要求しか出ないこともありますが、遊びの中でいろいろなやりとりができるように広げていくことがポイントです。

遊びのねらい

「自分の行動が人に影響を与える」ことを経験し、人との関わりが楽しいと感じられるようにする。

おすすめの遊びと関わり方

手を引いて「どうぞ」「ちょうだい」あそび

親の手を引いたり、何かを差し出したりできるようになってきたら、「ちょうだい」「ありがとう」の簡単なやりとりを遊びに取り入れましょう。
  → たとえば、おやつやおもちゃを「どうぞ〜」と渡して、「ありがとう!」と笑顔で受け取ります。

ボール転がし

子どもの前にボールを転がし、「コロコロ〜」「もう一回!」などの声かけをしながら、転がし返してもらえるように促します。
  → 返せなくてもOK。親が何度も繰り返して見せることで、子どもはまねしやすくなります。

いないいないばあ

「いないいない…ばあっ!」の遊びは、予測とやりとりの感覚を育てる定番遊びです。子どもが自分でも「ばあっ!」とやりたがるようになるまで気長に楽しみましょう。

ポイント

・子どもが親の動きに注目しているだけでも十分です。
・繰り返しが大好きな時期なので、同じ遊びを飽きるまでやってあげてください。
・子どもの「手を引く」「声を出す」などの小さな表現も、しっかり受け止めて反応してあげましょう。

段階Ⅲ:やりとりを楽しむ遊び(非言語的なやりとりができる時期)

この段階になると、子どもは親と簡単なやりとりができるようになってきます。まだ言葉は出ていなくても、身ぶりや表情、声のトーンなどを使って「これがしたい」「もっと遊びたい」と伝えてくれるようになります。こうした非言語のコミュニケーションはとても大切で、遊びの中でもしっかりと活かしていきたいところです。やりとりができるようになると、親御さんも「一緒に遊べている」という実感が持てるようになり、遊びの時間が少しずつ長く続くようになります。

遊びのねらい

身ぶりや声、表情などで人とやりとりする楽しさを感じ、やりとりの回数を増やすこと。

おすすめの遊びと関わり方

おしくらまんじゅう(軽く押し合う感覚遊び)

「おしくらまんじゅう、押されてなくな〜♪」と歌いながら、背中を優しく押したり、じゃれたりします。声や表情を使ったやりとりが自然に生まれます。

コップを使った「乾杯あそび」

おもちゃのコップを使って「カンパーイ!」と声をかけてコップを合わせる遊びです。簡単なジェスチャーでのやりとりを楽しめます。

「もう一回!」の遊び

子どもが好きな動きを見せたら、「もう一回やる?」と聞いて、また繰り返して見せてあげます。子どもが体や声で「もっと!」と伝える経験ができます。

ポイント

・言葉は使えなくても「伝えようとしている」サインをキャッチして反応しましょう。
・同じ遊びを繰り返しながら、親子のテンポややりとりのリズムを育てます。
・「一緒にいると楽しい」「伝えると応えてくれる」という経験を増やすことが大切です。

段階Ⅳ:言葉やイメージを育てる遊び(少し話せるようになった時期)

言葉が少し話せるようになってくると、子どもは遊びの中で言葉を使って自分の気持ちや希望を伝えようとするようになります。ただし、まだ会話がスムーズに続くわけではありません。そこで、遊びの中で「こんにちは」「もう1回!」などの決まった言葉を繰り返し使えるようにしたり、ごっこ遊びなどを通して自然に言葉をやりとりできるようにしていきます。この時期は、言葉の土台となる「イメージ力(象徴機能)」が育つ時期でもあるため、おままごとやぬいぐるみ遊びなど、想像の世界で楽しめる遊びもとても効果的です。

遊びのねらい

言葉でやりとりすることへの興味を引き出し、象徴的な遊び(ごっこ遊び)を通して想像力と言葉を育てる。

おすすめの遊びと関わり方

おままごと

食べ物のおもちゃやぬいぐるみを使って「ごはん作るよ〜」「いただきます!」など、決まったセリフを繰り返しながらごっこ遊びを楽しみます。

人形やぬいぐるみに代弁させる

子どもが言葉に詰まる場面では、親が「ワンワンがこう言ってるよ〜」など、ぬいぐるみの口を借りて気持ちを表現してみせると、子どももまねしやすくなります。

絵本を使った「やりとり読み」

ただ読み聞かせるのではなく、「この子、何してるのかな?」「何て言ってるかな?」と問いかけながら、一緒に楽しむスタイルがおすすめです。

ポイント

・言葉を教え込もうとせず、「一緒に楽しむ」ことを第一に。
・決まった言葉のくり返しから始め、徐々にやりとりの幅を広げましょう。
・想像力を育てる遊びは、感情や人の気持ちを理解する基礎になります。

段階Ⅴ:感覚や運動を育てる遊び(どの発達段階でも活用できる)

この遊びは、どの発達段階の子どもにも取り入れることができますが、特に感覚や運動の発達に合わせて遊び方を工夫する必要があります。たとえば、人との関わりが苦手な子どもの場合、親に触られたり体を動かされたりすることを嫌がることがあります。そんなときは、無理に引っ張ったりせず、子どものペースに合わせながら少しずつ関わっていくことが大切です。もし、ある程度やりとりができる子どもであれば、親子で追いかけっこやリズム遊びなどを楽しむこともできます。ただし、中には体を大きく動かす遊びを好まない子もいるので、その子の反応を見ながら遊びの種類ややり方を調整していくことがポイントです。

遊びのねらい

感覚刺激を通して心地よさを感じたり、自分の体を動かす喜びを味わうこと。

おすすめの遊びと関わり方

バスタオルブランコ

バスタオルで子どもを包み、2人で持ってゆらゆら揺らす感覚遊びです。「ゆ〜らゆら〜♪」と声をかけながら、安心感を与えます。

トンネルくぐり

クッションや段ボールで簡単なトンネルを作って、親と一緒にくぐったり、ぬいぐるみを先に通して「わ〜おばけが出た!」と盛り上げます。

スキンシップ遊び(ぶらぶら体操・こちょこちょ)

手足を持って軽くぶらぶらさせたり、歌に合わせて体を軽くタッチするなど、身体に触れながらリズムを楽しむ遊びです。

ポイント

・嫌がる場合は無理に触れたり動かしたりせず、子どものペースに合わせてください。
・安心できる関係の中で「体を動かすって楽しい」と感じられることが大切です。


子どもの今の状態に合った遊びを知ることで、無理なく、でも着実に「人との関わり」へとつなげていくことができます。親子でふれあいながら、一緒に少しずつ楽しい時間を増やしていきましょう。

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