3歳から4歳:想像と質問の世界と好奇心を支える親の姿勢
「なんで?」「どうして?」と次々に尋ねてくる声に答えているうちに、ふと疲れを感じることがあるかもしれません。想像の中で生きる時間が増え、現実と空想の境目が曖昧になることもある。友だちと遊びたがる一方で、些細なことで喧嘩になったり、泣いて帰ってきたりする。この時期の子どもは、自分の内側に広がる世界と、外側にある現実の両方を行き来しながら、日々を過ごしています。
この時期の子どもが見せる育ちの姿
3歳を過ぎると、子どもの言葉は一気に豊かになります。単に物の名前を言うだけでなく、自分の考えや感じたことを言葉にしようとするようになり、会話らしいやりとりが成り立つようになります。それと同時に、質問が増えるのもこの時期の特徴です。目に映るもの、耳に入ること、すべてが不思議で、理解したいという欲求が溢れ出してきます。
想像力もまた、ぐんと広がりを見せます。ごっこ遊びの中で役になりきったり、見えないものを見えるかのように語ったり、物語を自分なりに膨らませたりする。時には、本当にあったことのように空想の出来事を話すこともあります。それは嘘をついているわけではなく、頭の中で思い描いたことと現実の記憶が混ざり合っているだけのことが多いのです。
また、この時期には他の子どもとの関わりも変化していきます。一緒に遊ぶ楽しさを感じる一方で、おもちゃの取り合いや順番をめぐる衝突も日常的に起こります。まだ相手の気持ちを完全に理解することは難しく、自分の思いを優先させようとする姿も見られます。けれども、そうした経験を重ねる中で、少しずつ「他者」という存在を意識し始めているのです。
大人の心に生まれるさまざまな思い
この時期の子どもと向き合う中で、「ちゃんと伝わっているのだろうか」と不安になることがあるかもしれません。何度も同じことを繰り返し言っているのに、次の瞬間には忘れているように見える。約束したはずなのに守られない。そんな時、「この子はわかっているのか」「自分の関わり方が間違っているのでは」と悩むこともあるでしょう。
また、園や外での様子を聞いて、家での姿との違いに戸惑うこともあります。「うちではわがままなのに、外ではいい子だと言われる」「友だちとうまく遊べていないようだ」といった話を耳にすると、心配や焦りが湧いてくることもあります。
子どもの言動が周囲からどう見られているか、気になることもあるかもしれません。公共の場で大きな声を出したり、思い通りにならずに泣いたりする姿を見て、「もっとしっかりさせなければ」とプレッシャーを感じることもあるでしょう。けれども、この年齢の子どもはまだ、感情をうまくコントロールする力が育っている途中です。
日々の中で心に留めておけること
この時期の子どもは、たくさんのことを吸収しながらも、まだ理解や行動が安定していません。言葉で伝えられることが増えた分、大人はつい「わかっているはず」と期待してしまいがちですが、理解することと実際に行動に移すことの間には、大きな隔たりがあります。「わかっているのにやらない」のではなく、「わかっていてもまだできない」ことが多いのです。
だからこそ、一度で完璧を求めるのではなく、繰り返しの中で少しずつ身についていくものだと捉えてみると、少し楽になるかもしれません。「また言わなきゃいけないのか」と感じる時もあるでしょうが、それは子どもの問題というよりも、この年齢の自然な姿なのです。
想像と現実が混ざり合った話をする時も、「嘘をついている」と決めつけるのではなく、「この子の中ではそう見えているんだな」と受け止めてみる。そのうえで、必要であれば「本当はこうだったよね」と静かに現実を示してあげることで、子どもは少しずつ境界を学んでいきます。
友だちとのトラブルについても、すぐに解決を求めなくていいかもしれません。喧嘩をしたり仲直りをしたりする経験そのものが、人との関わり方を学ぶ大切な機会になります。もちろん、誰かを傷つけるような行動は止める必要がありますが、「うまくいかなかった」という経験も、成長の一部として見守ることができると、子ども自身も自分のペースで学んでいけるのではないでしょうか。
また、子どもの「なぜ?」に全て答えなければならないわけではありません。疲れている時や答えがわからない時には、「なんでだろうね」と一緒に考えてみたり、「今度調べてみようか」と先延ばしにしたりしても構いません。完璧に応えることよりも、子どもの興味を尊重しようとする姿勢が、安心感につながります。
