4歳から5歳:友だち関係と心の育ちと葛藤を見守る関わり方
園から帰ってきた子どもが、友だちとのやりとりを嬉しそうに話してくれる。けれども次の日には「行きたくない」と言い出したり、些細なことで傷ついた様子を見せたりする。4歳を過ぎると、子どもの世界は家の外へと大きく広がり、そこで経験する喜びも葛藤も、以前とは違う複雑さを帯びてきます。その姿を見守る中で、「どう支えてあげたらいいのだろう」と考えることもあるかもしれません。
この時期の子どもが見せる育ちの姿
4歳から5歳にかけて、子どもたちは言葉を使って自分の考えや経験を伝える力が飛躍的に伸びていきます。出来事を順序立てて話したり、理由を説明しようとしたり、時には大人顔負けの言い回しを使ったりすることもあります。質問の内容も具体的になり、「どうして空は青いの?」「人はどうやって生まれるの?」といった、答えに困るような問いを投げかけてくることもあるでしょう。
想像の世界もさらに豊かになり、ごっこ遊びには複雑なストーリーや役割分担が生まれます。仲間と一緒に何かを作り上げたり、ルールを決めて遊んだりする姿も見られるようになります。ただし、まだ自分の思い通りにしたい気持ちも強く、意見がぶつかったり、仲間外れを感じて傷ついたりすることも少なくありません。
また、この時期には「できること」と「できないこと」の差が目に見えて現れてきます。絵を描く、走る、話す、考える。それぞれの得意不得意が少しずつ明確になり、子ども自身もそれを意識し始めます。他の子と比べて「自分はできない」と感じたり、逆に「自分は上手だ」と誇らしげになったりする姿も見られます。そうした自己認識の芽生えは、自信につながることもあれば、不安や劣等感を感じるきっかけにもなります。
大人の心に生まれるさまざまな思い
この時期になると、子どもは家庭の外で多くの時間を過ごすようになります。園での様子を直接見ることができない分、「ちゃんとやっているだろうか」「友だちとうまくいっているだろうか」と気になることもあるでしょう。先生から何か指摘されると、「もっと何かしてあげなければ」とプレッシャーを感じることもあるかもしれません。
また、子どもが家で見せる姿と外での姿にギャップがあると、戸惑うこともあります。「園ではちゃんとしているのに、家では甘えてばかり」「外では元気なのに、家では不安そう」。そんな違いを目の当たりにすると、「どちらが本当の姿なのか」と混乱することもあるでしょう。
さらに、この年齢になると、周囲からの期待や評価も増えてきます。「もう年中さんだから」「もうすぐ小学生だから」といった言葉とともに、できることを求められる場面が増え、それが親自身へのプレッシャーにもなります。「このままで大丈夫だろうか」「何か足りないことはないだろうか」と、先回りして心配してしまうこともあるかもしれません。
日々の中で心に留めておけること
この時期の子どもは、自分の世界を広げながらも、まだ家庭という安全基地を必要としています。外で頑張っている分、家では甘えたり、わがままを言ったりすることもあります。それは退行しているのではなく、外で使ったエネルギーを家で補充しているのだと捉えることもできます。家で見せる弱さや甘えは、信頼の証でもあるのです。
友だち関係での悩みや葛藤も、この時期には避けられないものです。仲間に入れてもらえなかった、喧嘩をした、嫌なことを言われた。そうした経験を聞くと、親としては何とかしてあげたくなるかもしれません。けれども、すぐに解決してあげることよりも、まずは「そんなことがあったんだね」と気持ちを受け止めることが、子どもにとっては安心につながります。そのうえで、「どうしたいと思う?」と子ども自身に考える余地を残してあげることで、少しずつ自分で対処する力が育っていきます。
他の子と比べて不安になることもあるかもしれませんが、この年齢では個人差がとても大きいものです。得意なことも苦手なこともそれぞれ違い、成長のペースも一人ひとり異なります。「あの子はできているのに」と焦るよりも、「この子なりに、こんな成長をしているな」という視点で見てみると、見えてくるものが変わることもあります。
また、子どもの質問に全て完璧に答えなければならないわけではありません。知らないことは「わからないな、一緒に調べてみようか」と正直に伝えてもいいですし、答えにくい質問には「どう思う?」と逆に尋ねてみることで、子ども自身が考える機会にもなります。大切なのは正確な情報を伝えることよりも、子どもの好奇心を尊重し、一緒に考えようとする姿勢なのです
