子どもの成長を深く知る心理発達ガイド:5歳から6歳

心理

5歳から6歳:就学準備期と不安と期待を抱える子どもに寄り添う

「もうすぐ小学生だから」という言葉を、気づけば何度も口にしていることがあるかもしれません。時計を読めるようになったり、自分で身支度を整えたり、友だちと約束をして遊びに行ったり。確かに成長を感じる一方で、まだ幼さの残る姿に「本当に大丈夫だろうか」と不安になることもあるでしょう。この時期は、子どもにとっても親にとっても、一つの節目に向かって歩んでいく特別な時間です。

この時期の子どもが見せる育ちの姿

5歳を過ぎると、子どもの思考はより論理的になり、物事のつながりや因果関係を理解する力が育っていきます。「こうしたらこうなる」という予測を立てたり、過去の経験をもとに判断しようとしたりする姿も見られます。会話の中では、自分の考えを説明したり、相手の話を聞いて質問したりと、やりとりがより深まっていきます。

友だちとの関わり方にも変化が現れます。ただ一緒に遊ぶだけでなく、「この子とは気が合う」「あの子とはうまくいかない」といった関係性を意識するようになります。仲良しグループができたり、時には仲間外れや対立が起きたりすることもあります。その中で、相手の気持ちを考えようとしたり、自分の言動が他者に与える影響に気づき始めたりする姿も少しずつ見られるようになります。

また、この年齢になると、自分自身への評価も明確になってきます。「自分は走るのが速い」「字を書くのは苦手」といった自己認識が生まれ、それが自信になることもあれば、劣等感につながることもあります。周囲と比べて「できない」と感じると、やる前から諦めてしまったり、挑戦を避けたりすることもあるでしょう。逆に、得意なことにはますます意欲を見せ、「もっとやりたい」と求めてくることもあります。

大人の心に生まれるさまざまな思い

小学校入学を控えたこの時期、親の心にはさまざまな感情が交錯します。「ちゃんと座っていられるだろうか」「勉強についていけるだろうか」「友だちはできるだろうか」。目に見えない未来への不安が、次々と頭をよぎることもあるでしょう。周囲から「準備はできている?」と聞かれるたびに、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。

また、子どもの苦手なことや気になる行動が目につくと、「今のうちに何とかしなければ」と焦る気持ちが湧いてくることもあります。文字がうまく書けない、じっと座っていられない、友だちとトラブルが多い。そうした姿を見るたびに、「このままで大丈夫だろうか」という心配が膨らんでいきます。

一方で、今までの幼い姿が少しずつ遠のいていくことに、寂しさを感じることもあるかもしれません。「もう赤ちゃんじゃないんだな」と思う反面、まだ甘えてくる姿を見ると、「まだ小さいのに」と複雑な気持ちになることもあるでしょう。この時期の親は、子どもの成長を喜びながらも、不安や寂しさ、焦りといった入り混じった感情を抱えているのです。

日々の中で心に留めておけること

小学校という新しい環境への不安は、大人だけでなく子ども自身も感じています。「どんなところだろう」「ちゃんとできるかな」という漠然とした心配を抱えながら、それを上手く言葉にできないこともあります。だからこそ、子どもの小さな変化や不安のサインに気づき、「何か心配なことある?」と声をかけてみることが支えになります。話してくれた時には、「大丈夫だよ」と励ますよりも、「そうなんだね、ちょっと心配だね」と気持ちをそのまま受け止めることが、安心につながることもあります。

苦手なことや気になる点については、無理に克服させようとするよりも、「今はこうなんだな」と受け止めることから始めてみてもいいかもしれません。文字が書けなくても、時間が経てば書けるようになることもあります。じっとしているのが苦手でも、環境が変われば落ち着くこともあります。もちろん、必要に応じて練習したり、サポートを求めたりすることも大切ですが、「できないこと」ばかりに目を向けすぎると、子ども自身が「自分はダメなんだ」と感じてしまうこともあります。

友だち関係でのトラブルや悩みも、この時期には避けられないものです。仲間外れにされた、喧嘩をした、意地悪を言われた。そうした話を聞くと、親としては胸が痛むものです。けれども、すぐに介入するのではなく、まずは子どもの気持ちを聞き、「それは嫌だったね」と共感することが第一歩です。そのうえで、「どうしたいと思う?」と子ども自身の考えを引き出してみることで、自分で対処する力が少しずつ育っていきます。

また、小学校入学に向けて完璧な準備をしなければならないわけではありません。できることが多い方が安心かもしれませんが、入学してから学ぶことも多いのです。それよりも、「困った時には助けを求めていい」「わからないことは聞いていい」という感覚を持てていることの方が、長い目で見れば大切なのかもしれません。

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