言葉がゆっくりな子のこころの育ちとは

ことばの遅れ
ふくろう
ふくろう

こんにちは
臨床心理士・公認心理師のふくろうです。

言葉と心は、どうつながっているのだろう

言葉の発達を心配するとき、つい「何語話せるか」「いつ話し始めるか」という目に見える部分に意識が向きがちです。けれど、言葉というのは、その子の心の動きと深く結びついていると考えられています。

言葉がゆっくりな子のこころの育ちとは、どのようなものなのでしょうか。話すことが遅いということは、心の成長も遅れているということなのでしょうか。それとも、言葉と心の育ちは別々に考えるべきなのでしょうか。

実は、言葉がゆっくりだからといって、心の育ちがゆっくりだとは限りません。むしろ、言葉にならない形で、豊かに育っている部分があることも多いのです。

ここでは、臨床心理士としての視点から、言葉がゆっくりな子どもの内面で起きていることや、心の育ちについて考えていきたいと思います。

言葉になる前に、心の中で起きていること

言葉を話すということは、実は心の中でいくつものプロセスを経た結果であると考えられています。

まず、何かを感じ取る力が必要です。お腹が空いた、眠い、嬉しい、怖い。こうした感覚を自分の中で認識することが、すべての始まりです。

次に、その感覚を誰かに伝えたいという気持ちが生まれます。一人で感じているだけではなく、「わかってほしい」「共有したい」という思いが芽生えることで、コミュニケーションへの動機が育つとされています。

そして、それをどう表現するかを選ぶ段階があります。泣く、笑う、身振りで示す、そして言葉にする。たくさんある表現方法の中から、その場面に合ったものを選んでいくのです。

言葉がゆっくりな子どもは、このプロセスのどこかで時間をかけている可能性があります。感じ取ることに丁寧さがあったり、伝えたいという気持ちが育つまでに安心感が必要だったり、表現方法を選ぶときに慎重だったり。

それは決して心が育っていないのではなく、子どもなりの心の動き方があるということです。

言葉以外の感情表現が育っているか

言葉がなくても、子どもは豊かに感情を表現しています。

嬉しいときには笑顔を見せ、体を揺らしたり手をバタバタさせたりする。悲しいときには泣き、怖いときには大人にしがみつく。怒ったときには物を投げたり、体を強張らせたりすることもあるでしょう。

こうした感情表現がしっかりとあるのであれば、子どもの心は確実に育っていると考えられます。言葉という形になっていないだけで、感じる力も伝える力も、ちゃんと育ちつつあるのです。

一方で、感情の表現そのものが乏しく見える場合もあります。あまり笑わない、泣くこともあまりない、何に対しても淡々としている。そんなときには、感情を感じ取ることそのものに時間がかかっている可能性がありますし、安心して感情を出せる環境をまだ十分に体験していないのかもしれません。

ただ、それも「心が育っていない」のではなく、「今はこういう形で育っている」ということです。子どものペースに合わせて、安心して感情を出せる関わりを続けていくことが大切になります。

人との関わりの中で育つもの

心の育ちは、人との関わりの中で生まれると考えられています。

赤ちゃんのころから、泣いたら抱っこしてもらえた、お腹が空いたらミルクをもらえた、笑いかけたら笑い返してもらえた。こうした小さなやりとりの積み重ねが、「人は自分の気持ちをわかってくれる存在だ」という基本的な信頼感を育てるとされています。

この信頼感が土台にあると、子どもは安心して自分の気持ちを表現できるようになることが多いと言われています。言葉が出なくても、泣いたり笑ったり、身振りで示したり。そして、やがてそれが言葉という形につながっていく場合があります。

言葉がゆっくりな子どもの中には、この土台づくりに時間をかけている子どももいます。もしかしたら、何らかの理由で安心感を得にくい環境にあったのかもしれませんし、生まれ持った気質として、信頼を築くまでに慎重な時間が必要なのかもしれません。

どちらにしても、今から丁寧に関わりを重ねていくことで、その土台は少しずつ育っていく可能性があります。焦らず、子どものペースで関係を築いていくことが、心の育ちを支えることになる場合があるのです。

安心感が言葉を育てる

言葉は、安心できる環境でこそ育つとされています。

緊張していたり、不安を抱えていたりすると、人は言葉を失うことがあります。これは大人も子どもも同じです。新しい環境に入ったとき、知らない人に囲まれたとき、何か怖いことがあったとき。そんなときには、たとえ話せる力があっても、言葉が出てこなくなることがあります。

言葉がゆっくりな子どもの中には、日常の中で何らかの緊張や不安を感じ取っている子もいるかもしれません。それは家庭の中の小さな変化かもしれませんし、保育の場での人間関係かもしれません。あるいは、周囲の期待や焦りを敏感に感じ取っているのかもしれません。

子どもの心に安心感が戻ってくると、不思議と言葉も出やすくなることがあります。だからこそ、言葉を引き出そうと焦るよりも、まずは子どもが安心して過ごせる環境を整えることが大切になります。

穏やかに話しかける、急かさない、失敗を責めない、ありのままを受け止める。そうした関わりが、心の安全基地を作り、やがて言葉を育む力になっていきます。

内面の世界が豊かに育っている可能性

言葉が少ないからといって、子どもの内面が空っぽなわけではありません。

むしろ、言葉にならない形で、豊かに何かを感じ取っている子どももいます。音楽を聴いて心地よさを感じたり、絵本の絵をじっと見つめて何かを受け取ったり、自然の中で風や光を全身で感じたり。

こうした感覚的な体験は、言葉で表現されなくても、子どもの中に確実に蓄えられていると考えられています。そして、それがいつか言葉として表に出てくるときが来るかもしれませんし、別の形で表現されるかもしれません。

大切なのは、言葉がすべてではないということです。子どもが今、何をどう感じているのか。その内面の動きに目を向けることが、心の育ちを理解する鍵になる場合があります。

一人ひとり違う心の育ち方

心の育ちにも、一人ひとり違うペースがあります。

早くから感情を豊かに表現する子もいれば、じっくりと時間をかけて感情を育てていく子もいます。人との関わりをすぐに楽しめる子もいれば、慎重に距離を測りながら少しずつ近づいていく子もいます。

言葉がゆっくりな子どもの心の育ちも、その子なりの道筋をたどっています。周りの子と比べて早い遅いがあるかもしれませんが、それはその子の個性であって、優劣ではありません。

むしろ、時間をかけて育っていくものには、深さや丁寧さがあることも多いとされています。急いで詰め込まれたものよりも、ゆっくりと育ったもののほうが、しっかりと根を張っていることもあります。

子どものペースを信じることが、心の育ちを支える第一歩になります。

心の育ちを支えるためにできること

では、親として、言葉がゆっくりな子どもの心の育ちを支えるために、何ができるでしょうか。

一つの方法として、子どもの感情に寄り添うことが挙げられます。嬉しそうにしていたら「楽しいね」と声をかけ、困っていそうなら「どうしたの?」と気にかける。言葉がなくても、表情や仕草から読み取れる感情に、丁寧に応えていく。そんな関わりが、心の育ちを支える場合があります。

もう一つは、安心できる時間を大切にすることです。急かさず、比べず、子どもと一緒にいる時間をゆったりと過ごす。そんな時間の中で、子どもは心を開き、自分の感情と向き合えるようになっていくことがあります。

そして、子どもの興味や関心に寄り添うことも大切です。好きな遊びを一緒に楽しんだり、気になったものを一緒に見つめたり。そうした共有の時間が、人と気持ちを通わせる喜びを育て、やがて言葉へとつながっていきます。

どれも特別なことではありません。でも、こうした日常の積み重ねが、子どもの心を静かに、確実に育てていく可能性があるのです。

言葉と心は、ともに育っていく

言葉がゆっくりだからといって、心の育ちが止まっているわけではありません。

言葉と心は、互いに影響し合いながら、一緒に育っていくものだと考えられています。心が育てば言葉も豊かになり、言葉が育てば心の世界も広がっていく場合があります。

今は言葉という形になっていなくても、子どもの中では確実に何かが育っています。感じる力、伝えたい気持ち、人と関わる喜び。そうした心の動きが、少しずつ言葉という形をとる準備をしているのかもしれません。

焦らず、でも見守りながら、子どもの心の育ちに寄り添っていけたらと思います。言葉だけを見るのではなく、その奥にある心の動きに目を向けること。それが、本当の意味で子どもを理解することにつながる可能性があるのではないでしょうか。

あなたが今感じている不安や心配も、子どもの心を大切に思うからこそ生まれているものです。その気持ちを大事にしながら、一日一日を重ねていってください。子どもの心は、あなたが思っている以上に、しっかりと育ち続けています。

ふくろう
ふくろう

ここまで読んでくれてありがとう。


※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うものではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

このブログについて

タイトルとURLをコピーしました