保育園・幼稚園で癇癪が出る子ども

かんしゃく
ふくろう
ふくろう

こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。

はじめに

園では癇癪が出ると聞くと、「集団生活に向いていないのでは」と不安になることがあります。

この記事では、園生活と癇癪の関係を整理し、家庭と園で共有しておきたい考え方を解説します。

先生からの電話に、胸が締め付けられる

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どものことで、園から連絡を受けたとき、親の心はどんな気持ちになるでしょうか。「今日、お子さんが激しく泣いて、なかなか落ち着けませんでした」「お友達とのトラブルで癇癪を起こしてしまいました」そんな報告を受けるたびに、申し訳ない気持ちと、我が子への心配と、どうしていいか分からない不安が入り混じります。

家では何とか対応できているのに、園では頻繁に癇癪を起こしている。あるいはその逆で、園では問題ないと言われるのに、家に帰ってくると激しく崩れてしまう。どちらの場合も、親は自分の関わり方を責めてしまうことがあるでしょう。

「他の子どもはちゃんとできているのに」「周りの保護者にどう思われているだろう」そんな思いが頭をよぎり、園への送り迎えの時間が憂鬱になることもあるかもしれません。けれども、保育園・幼稚園で癇癪が出ることには、家とは違う理由がある場合が多いのです。

保育園から電話がかかってくるとまた何かしたのではないかと思ってしまいます。

集団生活という環境の特殊性

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもの背景を理解するために、まず集団生活という環境そのものの特徴を考えてみる必要があります。

園という場所は、家庭とは全く異なる空間です。たくさんの子どもたちがいて、それぞれが自分のペースで動いています。遊びたいおもちゃは誰かが使っている、やりたいことは順番待ちをしなければならない、自分の思い通りにならないことの連続です。家では自分のペースで過ごせていたことが、園では許されない場合があります。

さらに、園には集団のルールがあります。みんなで一緒に行動する時間、静かにする時間、片付ける時間。そうした集団のリズムに合わせることが求められます。けれども、そのリズムが子ども自身の心や体のリズムと合わないとき、子どもは大きなストレスを感じることがあります。

また、園では常に評価される環境でもあると考えられています。先生に見られている、お友達に見られている、できるかどうか試されている。そうした緊張の中で、子どもは頑張り続けなければならない場合があります。その緊張が限界を超えたとき、癇癪という形で崩れてしまうことがあるのです。

そして何より、園には親がいません。いつでも甘えられる存在がいない、困ったときに助けてくれる人が必ずそばにいるとは限らない。その不安そのものが、子どもの心を不安定にさせる可能性があります。

園で癇癪が出やすい場面

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもの様子を見ていくと、いくつかの共通する場面があることが多いとされています。

一つは、朝の登園時です。親と離れる瞬間、不安や寂しさが一気に押し寄せてくることがあります。泣きながらしがみつく、教室に入ることを拒む、激しく抵抗する。分離不安と呼ばれるこの反応は、特に年少の頃に強く現れる傾向があります。

また、活動の切り替えの時間も癇癪が起きやすい場面の一つです。遊びを終えて片付ける時間、お部屋から外に出る時間、給食の準備をする時間。今やっていることを中断して次の活動に移ることが、子どもにとっては大きな負担になる場合があります。特に、遊びに夢中になっているときに急に切り替えを求められると、その喪失感が癇癪として表れることがあります。

お友達とのトラブルも、癇癪の引き金になることがあります。おもちゃの取り合い、順番をめぐる争い、言葉での行き違い。自分の思いが通らなかったとき、相手に嫌なことをされたとき、そのやるせなさを言葉で表現できず、癇癪として爆発させる場合があるのです。

さらに、給食やお昼寝の時間も難しい場面とされています。食べたくないものを食べなければならない、眠くないのに寝なければならない。そうした自分の気持ちと集団のルールとのズレが、癇癪につながることがあります。

家では大丈夫なのに、園では癇癪が出る理由

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもの中には、家では比較的落ち着いているのに、園でだけ激しく崩れてしまう子どももいます。その理由を理解することが、対応を考える上での助けになる場合があります。

園という環境は、家よりも刺激が多く、予測できないことがたくさん起こります。その環境そのものが、子どもにとって大きなストレスになっていることがあります。音に敏感な子どもにとって、たくさんの子どもたちの声は耐えがたい刺激になる場合があります。人混みが苦手な子どもにとって、常に誰かがそばにいる状況は落ち着けない可能性があります。

また、園では常に自分をコントロールし続けなければならないというプレッシャーがあると考えられています。いい子でいなければ、ルールを守らなければ、お友達と仲良くしなければ。そうした期待に応えようと必死に頑張っている結果、心のエネルギーが消耗してしまうことがあるのです。

そして、園では安心して甘えられる相手がいません。先生は複数の子どもを見ていて、いつでも自分だけに注目してくれるわけではありません。その孤独感や不安が、癇癪という形で表れる場合があるのです。

園では落ち着いているのに、家で癇癪が出る理由

逆に、保育園・幼稚園で癇癪が出ることはなく、先生からは「問題ありません」と言われるのに、家に帰ってくると激しく崩れてしまう子どももいます。この場合、園で頑張りすぎていることが背景にある可能性があります。

園では、必死に自分を抑えていることが多いとされています。泣きたいけれど我慢する、嫌だけれど従う、疲れているけれど頑張る。その緊張が一日中続き、家に帰って親の顔を見た瞬間に、糸が切れるように崩れてしまうことがあるのです。

これは、家が安全な場所だからこそ起きる現象の一つと考えられています。親の前でなら甘えても大丈夫、本当の自分を出しても受け止めてもらえる。そう感じているからこそ、園で溜め込んだ感情が一気に溢れ出す場合があるのです。

ですから、家で癇癪が出ることは、決して悪いことではありません。むしろ、子どもが家を安心できる場所だと感じている証拠の一つとも捉えることができます。ただ、その癇癪を毎日受け止める親にとっては、大きな負担になることも確かです。

ふくろう
ふくろう

家と園の違いは理解できましたか?

園との連携の大切さ

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもへの対応を考えるとき、園との連携が非常に重要になります。

まず、園での様子を具体的に聞いてみることが大切です。どんな場面で癇癪が起きるのか、何がきっかけになっているのか、どのくらいの頻度で起きているのか。そうした情報を共有することで、子どもへの理解が深まる可能性があります。

そして、家での様子も園に伝える。家では落ち着いているのか、それとも家でも癇癪があるのか。最近の生活リズムや、気になっていることなど。園と家庭の両方の情報を統合することで、子どもが何に困っているのかが見えてくることがあります。

また、園での対応方法についても相談してみることができます。どんな声のかけ方が効果的か、どんな配慮があると子どもが落ち着けるか。先生と一緒に考えることで、より良い支援につながる可能性があります。

ただし、園に相談することに遠慮を感じる親もいるかもしれません。「迷惑をかけている」「手のかかる子だと思われたくない」そんな思いが頭をよぎることもあるでしょう。けれども、子どもの育ちを支えるためには、園との協力が不可欠です。遠慮せず、気になることは相談してみることが大切です。

家庭でできること

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どものために、家庭でできることもあります。

まず、園から帰ってきたら、ゆっくり過ごせる時間を作る。園で頑張ってきた分、家では何も求めない時間を持つ。ただそばにいて、子どもが好きなように過ごす。その時間が、子どもの心を回復させていく可能性があります。

また、園での出来事を無理に聞き出そうとしないことも大切です。「今日は何したの?」「誰と遊んだの?」そうした質問が、子どもにとってはプレッシャーになることがあります。話したいときに話せる雰囲気を作っておく。それだけで十分です。

そして、園で頑張っている子どもを認めてあげる。「今日も園に行けたね」「頑張ったね」その一言が、子どもにとっては大きな励みになる場合があります。

さらに、生活リズムを整えることも重要です。十分な睡眠、規則正しい食事、穏やかな朝の時間。基本的な生活が安定していることが、園での心の安定にもつながる可能性があると考えられています。

専門的な支援が必要なとき

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもの中には、何か特別な支援が必要な場合もあります。

癇癪の頻度が非常に高く、集団生活に大きな支障が出ている場合、あるいは癇癪以外にも気になることがある場合は、専門家に相談してみることも一つの選択肢です。発達相談や、園を通じて専門機関につながることもできます。

感覚の過敏さ、集団への適応の難しさ、不安の強さなど、何か背景にある理由が分かることで、適切な支援が見えてくることがあります。早い段階で支援につながることで、子どもも、家族も、園も、みんなが楽になる可能性があるのです。

相談することは、決して子どもに問題があると認めることではありません。むしろ、子どもをより理解し、より良い環境を整えてあげるための一歩です。

もし癇癪が発達的な特性と関係しているのではないかと不安になったときには、その不安を誰かと共有することも助けになる場合があります。一人で悩まず、専門家の力を借りながら、子どもにとって最善の道を探していくことができます。

保育園・幼稚園で癇癪が出る子どもへの対応に正解はありません。けれども、子どもが何に困っているのかを理解しようとすること、園と連携しながら支えていくこと、そして何より、自分自身を責めないこと。その積み重ねが、子どもの育ちを支えていく可能性があります。焦らず、一日ずつ、できることから始めていけたらと思います。

ふくろう
ふくろう

ここまで読んでくれてありがとう。


※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うもではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。

このブログについて


あわせて読みたい|子どもの癇癪を全体から理解する

子どもの癇癪については、
年齢・状況・関わり方ごとに整理したまとめページがあります。

「他にも関係する原因があるかもしれない」
「次に何を読めばいいか分からない」

という方は、こちらから全体像をご覧ください。

▶ 子どもの癇癪の原因・対応・相談の目安をまとめたページ
 こちら

タイトルとURLをコピーしました