
こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。
はじめに
兄弟げんかがきっかけで癇癪になると、対応が難しく感じられることがあります。
この記事では、兄弟関係の中で起きる感情の動きをもとに、癇癪へ発展する理由を解説します。
一瞬で荒れ狂う、家の中の空気
兄弟げんかから癇癪に発展する理由が分からず、途方に暮れている親もいるのではないでしょうか。さっきまで仲良く遊んでいたのに、次の瞬間には取っ組み合いが始まっている。おもちゃの取り合い、順番をめぐる言い争い、些細な言葉のやりとり。そうしたきっかけから、一人、あるいは両方が激しく泣き叫び、床を転がり、物を投げる場合があります。
仲裁に入ろうとしても、どちらの言い分も聞こえない。「お兄ちゃんなんだから」「お姉ちゃんでしょ」と言えば、余計に激しく泣くことがあります。公平に対応しようとしても、どちらかが「親は○○ばっかり」と訴える。その繰り返しに、親自身の心も消耗していくことがあるでしょう。
「どうしてこんなに激しくなるのだろう」「普通のきょうだいはもっと仲良くしているのでは」そんな思いが頭をよぎり、自分の育て方を責めてしまうこともあるかもしれません。けれども、兄弟げんかから癇癪に発展するのには、単なるけんか以上の理由があると考えられています。
兄弟げんかが癇癪に発展する心理
兄弟げんかから癇癪に発展する理由を理解するために、まず兄弟関係そのものの特殊性を考えてみるとよいかもしれません。
一般的に、兄弟姉妹は子どもにとって最も身近な他者だとされています。お友達なら嫌なときは距離を取れますが、兄弟は常に同じ家にいます。逃げ場のない関係だからこそ、感情がぶつかり合う場合があります。そして、兄弟は愛情の競争相手でもあることが多いでしょう。親の注目を巡って、常に競い合っている状態になることがあります。
だからこそ、兄弟げんかは単なる物の取り合いではなく、「親に愛されているのはどちらか」という確認の場になることがあると考えられています。おもちゃを取られたことよりも、親が相手の味方をしたように感じることの方が、子どもにとっては耐えがたい経験になる場合があります。その傷つきが、癇癪という形で爆発することがあるのです。
また、兄弟げんかは、日頃溜まっているストレスの発散の場になることもあるとされています。園や学校で我慢していること、うまくいかないことへの苛立ち、満たされない気持ち。そうした感情が、家で安心して出せる相手である兄弟に向けられる場合があります。けんかそのものが目的ではなく、溜まった感情を吐き出す手段として、兄弟げんかが利用されていることもあると考えられます。
さらに、年齢や発達段階の違いも影響することがあります。上の子どもは「自分ばかり我慢させられる」と感じ、下の子どもは「いつも負ける」と感じることがあるでしょう。その不公平感が、けんかを激化させ、癇癪へと発展させていく場合があります。
上の子どもが癇癪を起こす理由
兄兄弟げんかから癇癪に発展するとき、上の子どもが激しく崩れることがあります。その背景には、上の子どもならではの葛藤があると考えられています。
下の子どもが生まれてから、上の子どもは「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」として扱われるようになる傾向があります。我慢することを求められ、譲ることを期待され、手伝うことを当然視される場合があります。けれども、その子ども自身もまだ小さな子どもです。甘えたい気持ちも、自分のペースで過ごしたい思いも、たくさん持っていることが多いでしょう。
下の子どもがおもちゃを壊した、下の子どもが自分の物を勝手に使った。そうしたとき、上の子どもは怒ります。けれども、親からは「貸してあげなさい」「まだ小さいんだから」と言われることがあります。その理不尽さに、上の子どもの心は深く傷つく場合があります。そして、その傷つきを表現する術を持たないまま、癇癪として爆発させることがあるのです。
また、下の子どもに親を取られたという喪失感も、上の子どもの心の奥底にある場合があります。かつては自分だけのものだった親が、今は下の子どもの世話で忙しい。その寂しさを直接伝えることができず、兄弟げんかという形で表現していることもあるかもしれません。
下の子どもが癇癪を起こす理由
逆逆に、兄弟げんかから癇癪に発展するとき、下の子どもが激しく崩れることもあります。下の子どもには下の子どもの辛さがあると考えられます。
下の子どもは、常に上の子どもと比較される傾向があります。「お兄ちゃんはできたのに」「お姉ちゃんはもっと早くできたよ」そうした言葉を、直接的にも間接的にも聞きながら育つことが多いでしょう。その比較の中で、自分は劣っているという感覚を持ってしまうことがあります。
また、下の子どもは力でも知恵でも上の子どもに勝てない場合が多いでしょう。けんかをしても負ける、言い争いをしても言い返せない。その悔しさや無力感が、癇癪という形でしか表現できないことがあるのです。言葉で勝てない分、体全体で怒りや悲しみを表すしかない場合もあります。
さらに、下の子どもは「小さいから」という理由で、いつまでも子ども扱いされることへの不満も抱えていることがあります。自分だって大きくなったのに、自分だってできるのに、いつも上の子どもばかりが認められる。その不公平感が、兄弟げんかを激化させる場合があります。
そして、下の子どもは上の子どもへの憧れと嫉妬を同時に持っていることが多いと考えられます。お兄ちゃん・お姉ちゃんのようになりたいという憧れと、でも親を取られたくないという嫉妬。その矛盾した感情が、複雑に絡み合って、癇癪として噴き出すことがあるのです。

兄弟によって癇癪を起す理由は違うんですね。

そうなんです。子どもの気持ちを理解することは大切です。
仲裁の難しさ
兄弟げんかから癇癪に発展するとき、親は仲裁に入ろうとします。けれども、その仲裁そのものが、さらなる癇癪を引き起こすことがあると考えられています。
公平に対応しようとして、両方の話を聞く。けれども、多くの場合、子どもたちはそれぞれ「自分が被害者だ」と思っています。相手の言い分を聞くこと自体が、自分を否定されているように感じられる場合があります。だからこそ、「でもお兄ちゃんが先に」「だってお姉ちゃんが」と、お互いに言い募ることがあります。
また、どちらか一方の味方をすれば、もう一方は深く傷つく場合があります。「親は○○の味方ばっかり」「親は私のこと嫌いなんだ」そうした言葉が飛び出し、癇癪はさらに激しくなることがあります。
さらに、上の子どもに我慢を求めれば、上の子どもの不満は蓄積していくことがあるでしょう。下の子どもを守れば、上の子どもは「いつも自分ばかり」と感じる場合があります。その不公平感が、次のけんかをより激しいものにしていくことがあるのです。
どう対応しても誰かが納得せず、どの言葉も誰かを傷つける。その袋小路の中で、親自身も疲れ切ってしまうことがあります。
兄弟げんかへの向き合い方
兄弟げんかから癇癪に発展する理由が分かっても、すぐに状況が変わるわけではありません。けれども、少し視点を変えることで、対応が楽になることがあるかもしれません。
まず、すべてのけんかに介入する必要はないということです。子どもたちが自分たちで解決できそうなけんかであれば、少し離れたところから見守る。その経験が、子どもたちにとっては大切な学びになることがあります。
ただし、怪我をしそうなとき、一方が明らかに理不尽な扱いを受けているときは、介入が役立つ場合があります。そのときも、どちらかの味方をするのではなく、状況を整理する役割に徹する。「今、二人とも同じおもちゃで遊びたいんだね」と事実を確認し、「どうしたらいいと思う?」と子どもたちに考えさせる。一つの方法として、このようなアプローチが効果的なことがあります。
そして、癇癪が起きてしまったら、まずは安全を確保することが大切です。激しく泣いている子どもを別の部屋に連れて行く、少し離れた場所で落ち着くのを待つ。癇癪の最中に説得や説教をしても、届かない場合が多いでしょう。
落ち着いた後で、「悔しかったね」「嫌だったね」と、それぞれの気持ちを受け止める。どちらが正しいかを判定するのではなく、どちらの気持ちも分かろうとする姿勢が、役立つことがあります。
日常の中でできる予防
兄弟げんかから癇癪に発展することを完全に防ぐことは難しい場合が多いでしょう。けれども、日常の中で少し工夫することで、その頻度を減らすことができるかもしれません。
一つの方法として、それぞれの子どもと一対一で過ごす時間を作ることが挙げられます。ほんの数分でも、その子どもだけに注目する時間があると、子どもの心は満たされる場合があります。兄弟げんかの背景にある愛情への不安が、少しだけ和らぐことがあります。
また、きょうだいそれぞれの良いところを、具体的に言葉にして伝える。比較するのではなく、その子ども自身を認める。「お兄ちゃんは優しいね」「お姉ちゃんは頑張り屋さんだね」「○○ちゃんは面白いね」そうした言葉の積み重ねが、子どもの自己肯定感を育てる助けになることがあります。
そして、上の子どもに過度な我慢を求めないことも大切だと考えられます。「お兄ちゃんなんだから」という言葉を使いすぎると、上の子どもは自分の気持ちを押し殺すようになる場合があります。時には、上の子どもを優先することがあってもいいのです。
さらに、けんかになりやすい状況を避ける工夫も効果的なことがあります。疲れている時間帯は一緒に遊ばせない、それぞれに自分だけのスペースを作る、取り合いになりそうなおもちゃは複数用意する。環境を整えることで、けんかの頻度は減らせる場合があります。ただし、個人差や状況によって効果は異なることがあります。
自分を責めないでほしい
兄弟げんかから癇癪に発展するとき、親は自分の育て方を責めてしまうことがあります。もっと公平に接していれば、もっと上手に仲裁していれば、もっと愛情を注いでいれば、こんなことにはならなかったのではないか。
けれども、一般的には、兄弟げんかは成長の一部だと考えられています。お互いの存在を通して、子どもたちは他者との関わり方を学んでいることが多いでしょう。我慢すること、譲ること、主張すること、妥協すること。そうした社会性を育てる場が、兄弟げんかである場合があるのです。
完璧に公平な対応などできません。どんなに気をつけても、どちらかは「自分の方が損している」と感じることがあります。それは親の失敗ではなく、兄弟関係の宿命のようなものだと言えるかもしれません。
大切なのは、完璧を目指すことよりも、それぞれの子どもの気持ちに寄り添おうとし続けることだと考えられます。うまくいかなくても、また明日があります。少しずつ、それぞれの子どもとの関係を育てていけば、それで十分なのです。
もし兄弟げんかと癇癪があまりにも激しく、日常生活に大きな支障が出ているようであれば、それぞれの子どもが何か特別な困難を抱えていないか、専門家に相談してみることも一つの選択肢です。
年齢ごとの癇癪の特徴を理解することも、兄弟それぞれへの対応を考える上で助けになることがあります。上の子どもと下の子ども、それぞれの発達段階に応じた理解が、関わり方のヒントを与えてくれることがあるでしょう。ただし、年齢や発達によって異なりますので、すべてに当てはまるわけではありません。
兄弟げんかから癇癪に発展する理由は複雑で、簡単な解決策はありません。けれども、それぞれの子どもが抱えている思いを理解しようとすること、完璧を目指さず柔軟に対応すること、そして自分を責めすぎないこと。その積み重ねが、家族みんなの心を少しずつ楽にしていくことがあります。焦らず、一日ずつ、できることから始めていけたらと思います。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うもではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。
あわせて読みたい|子どもの癇癪を全体から理解する
子どもの癇癪については、
年齢・状況・関わり方ごとに整理したまとめページがあります。
「他にも関係する原因があるかもしれない」
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