
こんにちは
公認心理師・臨床心理士のふくろうです。
はじめに
「どう声をかければいいのか分からない」
癇癪対応で多くの保護者が悩むポイントです。
この記事では、癇癪を悪化させにくい声かけの例と、避けたいNG対応を具体的に紹介します。
言葉が届かない、あの瞬間
癇癪を減らす声かけの具体例を知りたいと思っている親は、きっと何度も言葉を尽くして我が子どもに向き合ってきたのではないでしょうか。「やめなさい」と言っても止まらない。「落ち着いて」と声をかけても、ますます激しくなる。理由を説明しても、耳に届いていないように見える。そんな経験を繰り返すうちに、どんな言葉をかければいいのか分からなくなることもあるでしょう。
そして、つい感情的になって怒鳴ってしまった後で、深い後悔に襲われる。「あんな言い方をすべきではなかった」「もっと穏やかに対応できたはずなのに」そんな自責の念が、親の心を重くしていくことがあります。
けれども、癇癪への声かけには、効果的なものとそうでないものがあると考えられています。そしてそれは、育て方の上手い下手ではなく、子どもの心の状態と言葉の届き方の問題であることが多いのです。完璧な対応を目指すのではなく、少しずつ引き出しを増やしていくことが大切です。

どのように声かけたらいいか知りたいです。

さっそく話していくよ。
なぜ言葉が届かないのか
癇癪を減らす声かけを考える前に、まずなぜ癇癪の最中に言葉が届きにくいのかを理解しておくとよいかもしれません。
一般的に、子どもが激しく泣いているとき、脳の中では感情を司る部分が非常に活発に働いていると考えられています。その状態では、言葉を理解したり、論理的に考えたりする部分の働きが弱くなる場合があります。つまり、どんなに正しいことを言っても、どんなに優しく諭しても、その言葉を受け取る準備が子どもの脳にできていないことがあるのです。
さらに、癇癪の最中の子どもは、自分の感情に圧倒されていることが多いでしょう。悲しい、悔しい、怖い、不安だ。そうした感情が津波のように押し寄せてきて、他のことを考える余裕がない場合があります。その状態で説明や説得をしても、子どもにはただの雑音にしか聞こえないことがあります。
また、大人の声のトーンや表情も影響することがあります。焦っている声、怒っている表情は、子どもの不安をさらに高める場合があります。そうすると、癇癪はますます激しくなり、悪循環に陥っていくことがあります。言葉の内容以前に、声の調子や態度が子どもの心に影響を与えていることがあるのです。
癇癪を減らす声かけの具体例
癇癪を減らす声かけの具体例として、いくつかの場面ごとに効果的な言葉を考えてみましょう。ただし、これらはあくまでも一つの例であり、その子どもの性格や状況によって適した言葉は異なります。個人差がありますので、すべてに当てはまるわけではありません。
癇癪が始まりそうなとき、つまり子どもの様子がいつもと違うと感じたときには、予防的な声かけが効果的な場合があります。「何か嫌なことがあった?」「疲れてる?」と、子どもの気持ちに気づいていることを伝える言葉が助けになることがあります。自分の状態に気づいてもらえたと感じるだけで、子どもの心は少し落ち着くことがあります。
癇癪が起きてしまったときには、一つの方法として、長い説明は避けて、短く穏やかな言葉をかけます。「大変だったね」「悔しかったね」「嫌だったね」と、今子どもが感じているであろう気持ちを代弁する言葉です。この言葉は、子どもの感情を否定せず、ただ受け止めていることを伝えます。
そして、少し落ち着いてきたら、「そばにいるからね」「大丈夫だよ」と、安心を与える言葉を添えます。これは、子どもに「一人じゃない」「見捨てられていない」というメッセージを届けることがあります。
癇癪が収まった後は、「落ち着けたね」「頑張ったね」と、落ち着くことができた事実を認める言葉をかけます。ただし、この後すぐに説教を始めたり、「もう泣かないでね」と約束を求めたりすることは避けた方がいい場合が多いでしょう。子どもはまだ疲れ切っていて、そうした言葉を受け取る余裕がないことがあります。
日常の中で癇癪を減らしていくためには、普段からの声かけも大切だと考えられます。「今日は○○するよ」と予定を伝えておく、「あと五分で終わりにしようね」と見通しを持たせる。こうした予告の言葉が、子どもの不安を減らし、癇癪を予防することにつながる場合があります。
癇癪を悪化させるNG対応
癇癪を減らす声かけを考えるとき、同時に避けた方がいい対応も知っておくことが助けになることがあります。これらは決して「してはいけない」ことではなく、効果が薄い、あるいは逆効果になりやすい対応だと考えられています。
一つは、癇癪の最中に長々と説明することです。「どうしてそんなことするの」「さっきも言ったでしょ」「お兄ちゃんなんだから」といった言葉は、子どもの耳には届かないことが多いでしょう。それどころか、自分を責められていると感じて、ますます泣き叫ぶことがあります。
また、比較する言葉も避けた方がいい場合が多いでしょう。「○○ちゃんは泣かないのに」「弟はできるのに」そうした言葉は、子どもの自尊心を傷つけることがあります。そして、傷ついた心が癇癪をさらに激しくすることがあるのです。
脅しや罰を使った言葉も、効果は限定的であることが多いとされています。「泣き止まないとお出かけやめるよ」「そんなことするなら知らないから」といった言葉は、一時的に子どもを黙らせることがあっても、根本的な解決にはならない場合が多いでしょう。むしろ、不安や恐怖を増やし、長期的には癇癪を増やす要因になることがあると考えられます。
さらに、子どもの気持ちを否定する言葉も避けたいところです。「そんなことで泣かないの」「大したことないでしょ」といった言葉は、子どもに「自分の気持ちは受け入れてもらえない」というメッセージを送ることがあります。その孤独感が、癇癪という形でしか表現できなくなることもあるのです。
無視することも、慎重に判断する必要があります。確かに、癇癪への反応を減らすことで癇癪が減る場合もあります。けれども、完全に無視されることで、子どもは「見捨てられた」と感じることもあります。無視するのではなく、少し離れたところから見守る、という距離感が役立つことがあります。
声かけが効かないときの考え方
癇癪を減らす声かけの具体例を試しても、うまくいかないことがあります。そんなとき、親は自分の言葉が悪かったのではないかと責めてしまうかもしれません。
けれども、声かけだけで癇癪を完全にコントロールすることは難しい場合が多いでしょう。子どもの気分、体調、その日の出来事、様々な要因が複雑に絡み合って癇癪は起きることがあります。どんなに適切な声かけをしても、子どもの心がそれを受け取れる状態でなければ、効果は現れないことがあります。状況によって変わりますので、常に同じ結果が得られるとは限りません。
また、効果が出るまでには時間がかかることもあります。今日試した声かけが、すぐに結果につながるとは限りません。けれども、繰り返し穏やかな言葉をかけ続けることで、少しずつ子どもの心に届いていくことがあります。その積み重ねが、やがて癇癪を減らしていくことがあるのです。
そして、完璧な声かけを目指す必要はありません。時には感情的になってしまうこともあるでしょう。怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。それは人間として自然なことです。大切なのは、失敗したと思ったら、後で子どもに「さっきは怒鳴ってごめんね」と伝えること。その姿勢が、子どもに大切なことを教えていくことがあります。
声かけ以外の関わりも大切
癇癪を減らすためには、声かけだけでなく、日常の関わり全体が影響すると考えられています。
たとえば、子どもと穏やかに過ごせる時間を意識的に作ること。一日の中で、何も求めず、ただ一緒にいる時間。その時間が子どもの心を満たし、癇癪を減らすことにつながる場合があります。心が満たされていると、些細なことで癇癪を起こすことが減っていくことがあるのです。
また、生活リズムを整えることも重要だとされています。十分な睡眠、規則正しい食事、適度な運動。基本的な生活が安定していることが、子どもの心の安定につながることがあります。もし生活リズムの整え方について関心があれば、別の記事でより詳しく考えることもできます。
そして、子どもの良いところを見つけて言葉にすること。癇癪があると、つい問題行動ばかりに目が行くことがあります。けれども、できていること、頑張っていることも必ずあります。それを認める言葉が、子どもの自信を育て、心の安定につながることがあります。
一人で抱え込まないでほしい
癇癪を減らす声かけの具体例を試しても、状況が変わらないこともあります。そんなとき、親は一人で悩み続ける必要はありません。
家族に協力を求めること、時には誰かに子どもを預けて休息を取ること。そうした時間が、親自身の心を回復させることがあります。心に余裕があるときとないときでは、同じ言葉でも伝わり方が変わる場合があります。だからこそ、親自身のケアも大切なのです。
もし癇癪の頻度が非常に高く、声かけの工夫だけでは対応しきれないと感じるようであれば、専門家に相談することも一つの選択肢です。保健センター、発達相談、スクールカウンセラーなど、相談できる窓口があります。もし相談の目安や相談先について知りたいと思ったときには、それについて考える機会を持つこともできます。
また、もし癇癪のたびに自分が感情的になってしまい、そのことで苦しんでいるのであれば、その苦しみを誰かと共有することも大切です。完璧な親である必要はありません。自分の限界を認め、助けを求めることは、決して弱さではないのです。
癇癪を減らす声かけの具体例は、あくまでも一つの道具です。それを使いながら、試行錯誤を繰り返していく。うまくいかないこともあるけれど、少しずつその子どもに合った関わり方を見つけていく。その過程そのものが、子どもへの理解を深めていくことがあります。焦らず、自分を責めず、できることから始めていけたらと思います。

ここまで読んでくれてありがとう。
※この記事は、公認心理師・臨床心理士の「ふくろう」が、心理支援の現場経験をもとに執筆しています。
一般的な心理学的知見に基づいた情報提供を目的としており、特定の診断や治療を行うもではありません。子どもの状態や状況には個人差があります。心配なことがある場合は、医療機関や専門機関への相談をご検討ください。
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子どもの癇癪については、
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